アイザックの事故から聖戦までを原作沿いの流れの中で個人的解釈により大いに捏造
第一部カミュ氷/第二部ミロ氷
改稿前の2011年初出作品
性表現あります。18歳未満の方、閲覧をご遠慮ください。
◆第一部 06◆
「んっ…ふっ……っ」
カミュから施される全身への愛撫に、氷河は声が漏れるのを押さえられない。
自分の喉から出たものと思えないほど、高く甘い声が恥ずかしく、必死に唇を噛んで耐える。
「そんなに噛んでは怪我をする」
カミュは、歯を立てた唇をこじ開けるべく舌を這わせるが、氷河は上気した顔で、ただ首を左右に振って応える。
その小さな反抗すら、愛おしい。
白く色が変わるほど、きつく閉じられた唇に、カミュはそれなら、と自らの体を下にずらすと、すっかり硬く立ちあがっている氷河のものを口へと含んだ。
「やっ……ああっ……ああ!」
案の定、悲鳴にも似た声が氷河の喉から絞り出された。
「だ、だめ、です……そんなとこ……!」
氷河の制止を気にも留めず、ちゅぷちゅぷと水音をたてて、舌を何度も往復させる。
氷河は、自分の指で刺激した経験はあったものの、初めて感じる熱く湿った感覚に、下半身が甘く痺れ、背筋を痛みにも似た快感が駆け上がる。
あの、清廉なカミュの舌が、そんなことに使われていると思うと、羞恥と畏怖とでいたたまれない気持ちになるのに、一方で、淫靡な喜びが湧き上がり、氷河の欲望はますます昂ぶっていく。
カミュの頭が上下するたびに、絹のようにさらさらした髪の心地よい感触が腰をかすめ、それすら、氷河を頂へと追い詰める。
「あ、あ、や……や……だめ……やぁっ」
カミュが唇をひときわ強く搾り上げると、氷河は体を震わせるとカミュの口の中にその精を放った。
全身が桜色に染まり、汗ばみ、薄い胸が大きく波打っている。絶頂の余韻に漂っているその顔は両手で覆われ、泣き出しそうに歪んでいる。
カミュはまだ放出の倦怠感でぐったりとしている氷河の体を裏返し、白く引き締まった双丘を高く上げさせると、その中心に舌を這わせた。
氷河は、さきほどよりもさらにありえない箇所への刺激にビクリと体を震わせて振り返る。
「やっ……な……に……?」
カミュは舌を固く尖らせ、口の中に残っている、氷河の白濁した滴を塗りこめるように、その奥へと差し入れる。
「……やあっ……せんせ……」
驚いたように氷河が四肢をこわばらせる。まだ何者をも受け入れたことがないそこは、カミュの侵入を拒むように固く閉ざされている。カミュはゆっくりと丁寧に湿った愛撫を与え続けていった。
氷河は、譫言のように、だめ、いや、と繰り返していたが、やがてその声に淫らな色が混じり始めた。
先ほど精を放った氷河のものに再び力が戻っている。
カミュはあやすように氷河の腰をなで、体を起こした。
汗でうなじへ張りついた氷河の髪を掬い、そこへキスを落とす。
そして、さきほどまで舌を差し入れていた箇所へ自分の指をゆっくりと埋めた。
「やっ?……あっ……あーっ」
氷河が苦しそうに声をあげた。
カミュの愛撫によって濡れたそこにゆっくりと指を抜き差しさせる。
氷河の息がハッハッと短く上がっている。
カミュはすっかり立ち上がった氷河のものを、優しく手のひらで包み込み、やんわりと刺激してやりながら、ぐちゅぐちゅと後孔を掻き回す。
氷河は後ろに感じる違和感と、前にもたらされる直截的な快感を受け止めきれず、高く悲鳴をあげながら、逃げるように体をよじる。
カミュは氷河の頤に手をかけ、自分の方を向かせると、深く口づけた。唇の間で氷河の吐息と悲鳴が消えていく。
抜き差ししている指に抵抗が弱くなるのを確認して、さらにカミュは指を増やし、内壁を優しく擦りあげた。
「ふっ……んんっ……やあっ……せんせ…」
氷河の眦から涙がこぼれる。カミュは氷河の耳を優しく食み、そして、指を引き抜いた。正面を向かせ、足首をつかんで大きく開くと、すっかり張り詰めた自分の欲望の猛りを秘孔へと押し当てた。
「あっ……あああーーっ」
指で慣らしてはいても、圧倒的に硬度と質量とが違うものが侵入してきた痛みで、氷河は大きくのけぞり、叫んだ。
痛みをもたらしているのがカミュであるにもかかわらず、助けを求めるように見上げてくる。
その痛々しい様子と、内部の抵抗の大きさに、思わずカミュが腰を引きかけると、氷河がそれを引き留めるかのようにカミュの腕にすがってきた。
氷河の唇が、いかないで、というように小さく動いた。
うるんだ瞳で、全て受け止めようとしているいじらしい姿に、カミュは胸をつかれ、ならばせめて苦痛が長引かないようにと、氷河の肩を押さえ、一気に最奥まで突き入れた。
「あああーっ」
叫ぶまいとしても、声が自然と漏れる。
結合部が焼けるように熱い。
だが、自分の方が痛そうに苦痛に顔を歪めているカミュを見上げながら、氷河は歓びに満たされていた。
カミュが、自分のことをこんなに求めてくれている。
同じ部屋にいながら触れることが赦されないと、苦しい想いをかかえて過ごしたことに比べれば、今、カミュが与えてくれるものなら例え痛みでも嬉しかった。
むしろ、あの事故以来、一度も責められなかった自分への罰がようやく与えられた気がして、もっと酷くされてもいいとすら思った。
罪の意識を共有して、二人は、体の交わり以上に精神のより深いところで交わりあっっていた。言葉はなく、わずかな視線の動きや躊躇う指先に想いを乗せ、濃密に溶け合い、傷を舐めあうように体を重ねる。
カミュが緩やかに動き始める。自分の動きに合わせて、氷河のものも苦痛を紛らわせるように手のひらで一緒に刺激してやる。
氷河は大きく息をしながらも、目を閉じ、苦痛の中にまじるわずかな快楽を精いっぱい追いかけている。
氷河のものがカミュの手の刺激によって硬度を増し、滴をこぼし始めるのに比例して、貫かれている内壁は少しずつ解れて、その抵抗を弱めていく。
「んっ……ふっ……あ……あ……」
氷河の漏らす声が次第に甘さを帯び始める。その声を聞きながら、カミュも次第に律動を深くしていく。熱く狭く、カミュに絡みついてくる箇所から、快感が押し寄せてくる。
涙に濡れ、陶然とした表情でしどけなく開いた口元や、ひっきりなしに上げられる嬌声、カミュにすがりついてくる指先。幼い頃から手元で育てた氷河の、初めて見せるそれら全てがカミュをこれ以上ないほど昂ぶらせる。
壊れそうなほど激しく突き上げたくなる衝動にかられ、思わず、二度、三度と深く貫く。と、その点を突き上げた瞬間、急速に氷河の中が解れ、声が高くなった。
カミュはふ、と薄く笑い、氷河の耳を甘噛みして低く囁いた。
「ここが感じるのだな。氷河は」
「あっ……やあっ……ぁああっ」
氷河はいやいやと首を振って、カミュから与えられる刺激に耐えている。なまめかしく扇情的な姿態に、カミュは激しくその体を揺さぶるように突き上げた。氷河の体が汗ばみ、カミュにすがる指先が震えはじめる。カミュを受け入れている内壁がピクピクと痙攣し始める。絶頂が近い。
「やっ……ああっ……せんせ……あああああっ」
白い喉を曝け出して、氷河が果てたと同時に、カミュも氷河の中に欲望の滾りを注ぎ込んだ。
カミュはその腕に抱いた氷河の髪を優しく撫で続ける。
氷河の目尻が朱く腫れている。ひっきりなしに涙をこぼしたせいだろう。
無理をさせたか、と胸が痛くなる。
だが、氷河はカミュに体を預け、すうすうと寝息を立てている。
あの日以来、初めて見せる、安心しきった表情だ。
自分がしたことは間違っているのだろう。たぶん。
だが、この寝顔を見られるためならば、その罪を背負う覚悟はできている。
氷河の体温と、規則正しい寝息を胸に、カミュにも半年以上ぶりに心地よい睡魔が訪れた。