お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)
潜入捜査官ミロ妄想。ミロ氷ベースの氷河総受風味。
設定の性質上、反社会的行為に関する記述が多数表現しますが、それらの行為を肯定する意図は全くありません。
性表現あります。18歳未満の方、閲覧をご遠慮ください。
◆潜入捜査官ミロ ②◆
あの一件以来、「警察の犬」疑惑は払拭されたのか、ミロは以前よりカノンの懐近くへ出入りが許されるようになる。
どうせカノンにバレているならば隠すこともあるまい、と堂々と氷河を構うミロ。
しかし、氷河の方は相変わらずミロに対して壁を作ったまま。
他愛もない話をしている時はいいが、こんな世界、さっさとやめて真っ当に生きろ、とミロが説教を始めると、氷河は頑なに、あなたには関係ない、俺はここでなければ生きられないとけんもほろろに拒絶する。
殻を閉ざしている相手に無理強いしてまで組織を抜けさせることも今の立場ではままならず、ミロにできることと言えば、せいぜい、血なまぐさくない話題で氷河を笑わせてやることだけ。
たったそれだけの関係であるのに、口をきくのすら気に入らない、とでも言いたげにカミュは目に見えてミロを邪険にし、氷河を遠ざけようとする。
カノンはそんな三人の関係を面白がっている様子。
だが、カノンがただ微笑ましく見守っているだけの傍観者、ではない証拠に時折氷河は彼の閨へと呼ばれていく。
その間、護衛、と称してカミュとミロを次の間へ控えさせるカノン。
お気に入りのものを与えておいては取り上げて、誰がボスなのか、ということを骨の髄まで叩き込むのがカノンのやり方なのだ。
そばへ控えている間中、泣き声混じりの嬌声を聞かされ続けて、ミロは苛立つ。最初は義憤と氷河への同情でしかなかったものは、次第に氷河にそんな風に触れるカノンへの嫉妬へと変わっていく。
自分が抱える感情の正体に気づいて、参ったな、と困惑するミロ。
任務の障害にならなければいいが、と気持ちを抑えようとするが、こればかりはどうにもならない。
氷河の高い声が響くたびに、瞼の裏を真っ赤に染めるほどの激しい感情がミロの裡に熾きる。
いっそ、バカみたいに腰を振っているに違いない無防備な瞬間を狙って鉛玉を奴のこめかみにぶち込んでやれば、こんな茶番もすべて終わりだ、とも思うが、ミロの倫理観がその選択もさせない。カノンにはいつか絶対に法の裁きを受けさせてやる、とミロは、ただ、拳を握って耐えている。
一方のカミュは何を考えているのか、眉一つ動かしもしない淡々とした態度なのだが、一度だけ、扉の内側で、「せんせい、」と助けを求めるような氷河の微かな悲鳴が漏れた時には伏せた睫毛の先が細かく震えていたのをミロは見た。
氷河は単なるカミュの手駒、というだけではなさそうだと知って安堵する(もし利用されているだけなら氷河があまりに哀れだ)反面、カノンが、俺以外の名を呼ぶとはいい度胸だ、もっと「先生」を呼んでみるがいい、と面白がって執拗に氷河を攻め立てているというのに、閨に踏み込んで助け船を出すこともせず、扉の外で無表情を貫き続けるカミュの心はミロにはやはり理解できない。
カノンにその取引手腕を高く評価されていて、発言権を与えられている数少ない人間のひとりなのだから、カミュがひとこと、氷河にだけは手を出すな、と言えば、きっとカノンは聞かないまでも多少は控えるだろうに、と、動こうとしないカミュの姿勢がミロにはもどかしい。
とはいえ、ミロが睨みをきかせているおかげで、組織の中における氷河の待遇はずいぶんよくなった。
以前は、お前はそれが仕事だろう、と下卑た笑いをちらつかせて下っ端連中の欲望処理に使われることもあったようだが、今ではたいていの人間は近寄れない。
だが、とミロは憂う。
ミロに対する疑惑は払拭されたのかもしれないが、まだ、内部からの裏切りを警戒しているのか、カノンがこのところ動く様子は全くない。
捜査のあまりの長い膠着状態に、方針転換の情報がミロの耳に届いている。
潜入失敗。捜査打ち切り。
そんな事態になれば氷河と二度と接触することは適わない。組織に潜り込むのにもまるきり別人になる必要があったが、抜けるときはさらに困難を極めるのだ。抜けた後で軽率に組織の中にいる氷河に連絡など取ろうものなら二人の死体が海に浮かんで終わりだ。
氷河を連れて逃げようにも、肝心の氷河自身がミロと共には来ないだろう。
頑なに、俺はこの世界で生きていく、とミロを突っぱねる氷河の心を融かせそうな気配はない。
自分の抜けた後のこの腐りきった世界で、氷河がどんな風に生きねばならないのかと思うと、いっそ、このまま闇の世界の住人となって、氷河の後見人として生きてもいいか、という思いさえ抱くが、実際にミロがそういう生き方ができるかというとそれは口で言うほど簡単なことではなかった。
そんなときに事件が起きる。
いつものようにカノンの閨に氷河が呼ばれる。
今日はカミュは不在のため、ミロは一人で護衛につく。
扉の外、睦み事、と言うにはあまりに痛々しい氷河の声を聞かされるのか、とうんざりしていたが、今日はどうも様子がおかしい。
氷河の声がずいぶんと甘い。
悲鳴混じりの嬌声を否応なしに聞かされ続けるのも神経が焼き切れそうな思いで耐えねばならないのだが、舌足らずに、カノン、もっと、もっと、と強請る声を聞かされるのはさらに耐え難い。
氷河はもう心もあの悪魔にやってしまったのか、真っ当な道にすくい上げることはかなわないのかと、自分の無力さに吐き気を催していると、ややして、上機嫌でカノンが出てくる。
不快感を隠して唇を引き結んで立っているミロへ視線をくれると、カノンは笑った。
「どうだ、今日のはすごかっただろう」
言うなり、カノンはミロの股間へ手をやってぐっと中心を揉みしだく。
「はっ。あれで反応しないとはお前は不能か」
怒りで頭に血が上っているミロはそれどころではない。後先構わず、カノンの顔面に一発入れてやる、と拳を握れば、(両者にとって幸いなことに)同じタイミングでカノンの手がミロの背を扉の内側へと押した。
「後始末をしておけ。特別に今日は「使ってもいい」ぞ。不能のお前にアレの相手が務まるなら、な」
愉しげに笑ってカノンは去っていく。
氷河をモノのように言うな、とミロが振り向いた時には既にカノンの姿は消えていた。
くそっと扉を蹴って一度怒りを吐き出してから、ミロは室内へと踏み込む。
むせかえるような牡の匂いが鼻をつく。
キングサイズのベッドの上、乱れ、うねる白いシーツの波間に四肢を力なく投げ出す裸体。
髪は乱れ、唇はだらしなく開き、肌は白濁で濡れている。
「……氷河」
ミロの呼びかけに反応はない。
近寄ってみれば、焦点の合わぬ瞳が虚空を見つめていた。
事後の気怠さに惚けているにしてはあまりにおかしい、と周囲を見渡してミロは愕然とする。
サイドテーブルに乗った注射針。こぼれた白い粉末。
ドラッグセックスか……!
なんということを!
怒りで目の前が真っ赤に染まる。
カノンの足取りは確かで、彼自身がその影響下にあるようには見えなかった。
氷河にだけ使ったのだ。
さすがにカミュが止めると踏んで、故意にカミュの不在時を狙ったのだろう。
外道め!早死にしたいなら自分だけ勝手にすればいいものをなぜ他人を巻き込む!
氷河、と慌てて彼を抱き起こせば、焦点の合わぬ瞳がぼんやりとこちらを向いた。少年の腕がミロの首を引き寄せるように抱いて、耳元で笑い混じりの蕩けた声が囁く。
「身体が熱いんだ、早くあなたのもいれて……」
何をバカなことを言っている、正気に戻れ、とミロは氷河の頬を叩いたが、ぐにゃぐにゃと力の抜けた身体はすり寄るようにミロにもたれかかるばかり。
「ミロ、はやく……気がおかしくなりそうなんだ。奥にあなたの欲しい……」
耳元で濡れた声が切迫感を伝え、ミロに足を絡めて仕草でも強請る。
扇情的にミロを煽るものを理性で押さえ込むのは困難を極めたが、ミロはだめだ、と首を振った。
次第に氷河の声に非難がましさが混じる。
「なんでだよ、カノンはくれたのに……カノンがいい、カノン……」
ミロに愛想を尽かしたかのように、自ら己自身を慰撫し始める氷河。感覚が鋭敏になっているのか、すぐに髪を振り乱して聞いたことのない嬌声を上げ始める。
だめだ、氷河、とミロは氷河を背後から抱き締めてその両腕を拘束する。
「あ、な、なんで……?いやだ、離せ、」
疼く中心への刺激を求めて氷河は暴れる。ミロとの体格差をものともしないほどの常人離れした力に(これもドラッグの影響のひとつだ)、押さえ込むミロの額にも汗が滲む。
「ミロの意地悪。大嫌いだ、あなたなんて」
声に甘えが滲んでいるうちはまだ可愛いもの。そのうちに聞くに耐え難い暴言や、この少年の中にそんな語彙があったのかと驚くほどの卑猥な罵りの言葉が次々と吐き出され続ける。
「俺のことは何とでも言え。だが君はこんなものの味を覚えるな」
ミロの言葉の意味など今の氷河には届くべくもない。カノン、と、己の魂をけがした男の名を何度も呼び続ける少年を、ミロはただ抱き留め続ける。
ぐったりと動かなくなった身体に、そろそろ頃合いか、とミロはゆっくりと両腕の拘束を解いた。
手枷でもはめていたかのように、氷河の手首が真っ赤に染まっている。
力を加減してやるような余裕はミロにもなかった。
否、別の男の名を切なげに呼ぶ姿に苛立ち、故意に加減しなかったのかもしれない。
身体の自由を取り戻して、氷河がのろのろとミロを振り返る。涙と己の散らした白濁と汗とで酷い有様となった少年の瞳に光が戻っていた。
これほどの嵐を経験したというのに、そのブルーは清純な光を失ってはいない。
それでもミロと一瞬目が合うと、羞恥と自己嫌悪を滲ませて長い睫毛に隠れるようにそれは伏せられた。
「俺……何かあなたにひどいことを……?」
「覚えていないのか?」
「………わからない……どこまで現実でどこまで幻覚なのか……」
震えた白い肩を抱いてミロはその髪にキスを落とす。
「大丈夫。君は少し暴れただけだ。俺の方こそ怪我をさせたようで悪かったな」
手首を撫でれば、このくらい、と氷河がそこへ視線を落とした。
「カノンは何か言っていたのか」
「……全く新しいドラッグを開発したと」
「新しい?」
性的興奮を少し刺激するだけで副作用は全くなく、常習性も中毒性もない安全なものだ、と。
使用しても検出する術もなく、今のところ法規制の対象にもなっていない。
これは大きなビジネスチャンスだ。
そうカノンは嘯いた、と言う。
ミロは改めて、酷い様相を呈している氷河の姿へ目を落とす。
嘘だ、と思った。
刺激を与えられぬことにのたうち狂いながら、それでも氷河は触れられないでいるというのに堪えきれずに何度か白濁を散らしていた。
これが「少し」の刺激であるはずがない。鍛え抜いているミロの力でも押さえ切れぬほどの凶暴性すら見せていた。
そんなにうまい話であるはずがない。
抜け目のない男のことだ。現時点で法規制の対象外であることは本当だろうが、これほど危険なドラッグなら、すぐに規制の対象になるだろう。
きっと、規制になるまでの間に安価でじゃんじゃん流通させて中毒者を増やしておいて、規制になった途端に「違法薬物だから」ということで値段をつり上げるのだろう。荒稼ぎはそこからだ。
流通する前に阻止せねばならない。中毒患者が増えてからでは遅い。だが、今は規制する法がないのだ。警察という組織はどうしても後手に回りがちだ。
法規制ですら自分の利に結びつけるほど頭の切れる男だ。
別件でひいた(逮捕した)ところでせいぜい流通の時期を遅らせることができる程度だろう。
自分一人の判断で動ける案件ではない。早急にこの情報は警察の上層部にあげなければならない。
思案を巡らせているミロを、氷河の瞳がじっと観察するように見つめている。
ミロはそれには気づかない。
戻ってきたカミュに、ミロは事の顛末を話して聞かせる。
「新しいドラッグか」
大きな金が動く、忙しくなるなと呟くカミュに、感想はそれだけか、とミロは眉をつり上げる。
「お前はいったい氷河のことをどう思っている」
「お前には関係ない。氷河の保護者はわたしだ。口を出さないでいてもらおう」
「保護者?保護者だというなら氷河をあんな風に扱うヤツのことをどうにかしろ!」
「ヤツというのはボスのことか。一度は聞かなかったことにしてやるから、だるまになって海に浮かびたくないのなら口を噤むことだな、ミロ。お前はもう金輪際氷河には関わるな。氷河のためじゃない。ミロ、お前のためにわたしは言っている」
「聞いて呆れる。お前に任せておいたら氷河はあっという間に命を落とす」
「……だとしても、だ。とにかく氷河にはもう近づくな。氷河はお前が思っているような人間じゃない。庇護の必要なただの少年だと思っているなら先に命を落とすことになるのはお前だ。わたしは警告したぞ、ミロ。後はお前の責任だ」
ミロはどういう意味だ、とさらに食い下がろうとしたが、そこへカノンが登場する。
ミロへ何かを投げてよこす。
受け止めて、それが小型カメラだということを確認するミロ。
カノンがため息をつきながらミロの肩を抱く。
「あまり期待を裏切ってくれるな。つまらない画しか撮れていないから売れやしない。お前達のビジュアルならこれだけ(とカノンは片手を開いた)は堅かったのにつまらん男だ。それともあれはああいうプレイなのか?マニアックすぎるぞ」
くくっと笑うカノン。
氷河との一部始終は盗撮されていたのだ。
こんなこともあろうかと会話の声は抑えてあったが、どの程度声を拾われていたのかと、記憶を探ってヒヤリと腑が冷える。
ミロの緊張をよそにカノンの指がミロの巻き毛をくるくるともてあそぶ。
「俺の名を必死に呼んで可愛い坊やだろう……?あんなに苦しがっていたのに何故抱いてやらない?柄じゃなさそうだがもしかして俺に遠慮したのか?『使っていい』と言ったのだから次からは遠慮するな」
カノンはそう言ってミロの肩を叩く。
こうやって何度も挑発してはミロの忠誠心を試しているのだ、と気づいているからミロは無反応で返す。
案の定、挑発に乗らないことに面白くなさげに鼻を鳴らしておいて、カノンはようやくミロの肩を解放した。
そして蚊帳の外だったカミュの方へ向き直って、こい、仕事の話だ、と別室の方へ消えていく。
残されたミロは、は、と息を吐き出した。
吐き出して初めて、自分の全身の筋肉が緊張していたのだと気づいた。
自分ではあまり自覚はなかったが、周りが敵ばかり、というこの状況は相当なストレスをミロに強いているらしかった。
俺の精神も長くは保たんな。
正義を体現するためなら、と進んで手を挙げた潜入捜査ではあったが、正義感の強さゆえに精神の疲弊度は高かった。
さっき離れたばかりだというのに、そして、あれほどカミュに忠告されたというのに氷河の顔がまた見たい、と思った。
一線を越えた方が萌える場合と越えない方が萌える場合ってあると思うんですが、媚薬ネタ系はわたしは越えない方が断然萌えます。耐える男エロい。ていうか男なら堪えろ、愛ゆえに!!