寒いところで待ちぼうけ

ネタ


お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)
潜入捜査官ミロ妄想。ミロ氷ベースの氷河総受風味。

設定の性質上、反社会的行為に関する記述が多数表現しますが、それらの行為を肯定する意図は全くありません。


 (はじめに)

 没ネタは数々あれど、同じ没ネタでも色々あります。
 まるでつまらないから没にした、とか、書きかけたけど他サイト様とネタが全かぶりだった、とか、オチが思いつかなくて、寝かしたまま早3年、とか。これは「好きなものてんこ盛り妄想だけど知識がなさ過ぎて書けそうにない」から没になったネタです。

 潜入捜査官もののパラレルです。
 拳銃なんて持ったことないもの!(笑)裏社会なんてご縁がないもの!
(そんなこと言ったら男×男のアハンアハンだって自分じゃ経験したことなんてないわけですが)
 用語がイチイチわからなくて妄想ですら躓く。

 でも、好きなんです。潜入捜査官。だってエロくないですか。

 というわけで、自分の好きな展開てんこもり詰め込んだ、どっかで見たような(笑)潜入捜査官妄想です。銃がどうのこうのはググりながらがんばりました。

 カノン好きには厳しい配役になったかもしれない。カミュ先生好きにも。本物の彼らがそうだ、と言っているわけではなく、あの彼らがこの役をこなしているんだ、と捉えてくだされば幸いです。
 妄想の特殊性上、かーなーり、痛々しい描写多数です。自分比300%くらい流血してます。苦手な方は回避願います!文体バラバラですが、妄想メモなのでお気になさりませんよう!


◆潜入捜査官ミロ ①◆
 
 ミロは潜入捜査官として、ある犯罪組織に潜り込んでいる。
 下っ端のチンピラ仕事から始めて数か月、ようやく不法な薬物の取引現場に護衛として同行させてもらえるまでの信頼を勝ち得たところ。
 同じく下っ端チンピラに氷河という美少年がいる。
 でも下っ端のくせに氷河はなぜかあんまりいわゆる汚れ仕事はしていないようで、荒事担当のミロと接する機会はない。
 組織には、大きな取引を何度も成功させたとかで、組織に入ってたった半年で幹部に上り詰めたカミュという男もいる。
 組織に属してまだ半年のくせに、長い付き合いの人間にしか信頼を置かないと噂のボス(カノン)からの信頼もカミュは何故か絶大でどうやってその信頼を勝ち得たのかは誰にも謎。
 そして氷河はどうやらカミュの秘蔵っ子のようで、先生、先生、と氷河はカミュを慕い、カミュもたくさんの舎弟の中でとりわけ氷河を可愛がっている様子。

 ある日、組織の根城にて出会うミロと氷河。

 庭先に出て、迷い込んでいた小犬を構っている氷河を見かけてミロは近づく。
 身に染みついた刑事の性、まともでない生き方をしている少年をミロは放っておけないのです。(大人達に関しては自己責任、と割り切ってもいる。)
 なんだかんだと話しかけ、どうやって生きてきたのか、何でこんなところにいるのか、今なら間に合うからまともな職に就いたらどうだ、などと説教を。
 小犬を構いながら、自分だってまともに生きてないくせに変な奴、という顏で適当に聞き流している氷河。
「ミロ、イヌの匂いがする」
 一緒に小犬を構っていたミロの手がギクリと強張る。(イヌというのは刑事を指す隠語です)
「……俺は犬は好きだけどな。バカで可愛い」
 と笑った氷河に、ああ、そっちの「犬」か、と安堵しつつも、正体がバレたら命がないのは必至なので、あまり積極的に氷河の足抜けに力を添えてやるわけにもいかない、と自戒。

 とは言え、組織の暗部を知れば知るほど、あの少年はここへいるべきではない、という思いは強くなる。
 幸い、どういうわけか彼は荒事を伴う仕事からは遠ざけられているようだし、ならば後戻りはまだきく。なんとか大きな過ちを犯す前に組織を抜けさせてやりたい。
 このままではお決まりの、傷害(あるいは殺人)沙汰に巻き込まれてブタ箱行き、後は転落の一途、という人生が目に見えている。

 隙を見ては氷河を構うようになるミロ。
 クスリだとかオンナだとか酒だとか、そんな単語しか飛び交わない組織の中で、好きな音楽だとか、スポーツだとか、普通の少年らしい話題を振って、なんとかミロは氷河を外の真っ当な世界に繋ぎとめておこうとする。
 しかし、氷河はそういう話題を楽しんでいる風であるにもかかわらず、いつも最後は、俺に構うな、と強くミロを拒絶してそれ以上を踏み込ませないのだった。

 カノンという男はとても強かで、ここのところ組織内の情報が警察に漏れているらしいことに勘付いているのか、大きな取引も近頃は休んでおり、ミロの捜査も行き詰まりを見せ始めていてる。
 早く組織を一網打尽にして氷河を救い上げてやらないと、いつ、取り返しのつかぬ一線を越えるやもしれない。
 長く続く膠着状態に苛立つミロ。

 そうこうしているうちにある日、ミロはカノンの部屋に呼ばれる。
 てっきりまた荒事でも言いつけられるのだと出向けば、カノンの傍に冷たい赤い瞳をした男が控えていることにミロの胸が騒ぐ。
「最近どうもイヌ臭いと思わんか、ミロ」
 カノンの手には黒光りする拳銃。まるでおもちゃのようにカノンはくるくるとそれを回して弄ぶ。
「俺はイヌは嫌いな性質でな。奴らはどこへでも勝手に鼻を突っ込みやがる」
 会話の流れがどこへ行きつくのか、ミロはただ息を飲んで見守るしかない。
「だがやっと見つけた」
 ミロの心臓がドッと跳ね、背中を冷たい汗が流れる。
 カノンがカミュの方へ首を傾けると、カミュがどこかへ消え、ややして、氷河を連れて帰って来る。
 氷河の腕には例の小犬。
「コイツが隠れて飼っていた。俺の目を盗んで、な」
 おかしそうに笑い転げるカノン。氷河は青ざめてそれを見つめている。ミロも笑うどころではない。カミュは元から無表情だ。
 ひとしきり引き攣るように笑って、その哄笑をピタリと止めてカノンがミロを射すくめる。
「ミロ、俺はどうしたらいいと思う?」
 突然に答えを預けられてミロに緊迫が走る。
「……氷河はあなたからしたらまだせいぜい赤子のようなもの。子どものしたこと、と許す寛容さを見せれば、皆、一層あなたに忠義を誓うと思いますが」
 答えを間違うと自分の命が危ない、という局面だが、ミロはどうにかそう言った。
 子ども?子どもか……と何かを考えるようにカノンの指がトントンと机を叩く。
「だが、舐めた真似を許すわけにはいかんのでな。……確かお前はその小僧がお気に入りだったな?お前かカミュか、さあ、どっちから先に落とし前をつける」
 氷河を構っていることは誰にも知られていないはずだったのだが、とミロは改めてカノンの勘の良さに戦慄する。
 カノンに関する黒いエピソードは山ほどある。「落とし前」が単なる謝罪ではないことは明らかだ。
 痛みを覚悟したその時、ミロの隣で突然にカミュが動いた。
 カミュは、氷河の腕の中で鳴いている小犬の首根っこを掴み、カノンが机上に放り投げていた拳銃を掴むと、つかつかと窓へと近寄る。
 ガァン!という重い破裂音と、ギャン!という鳴き声が同時に響き、カミュは拳銃だけを片手に戻って来た。
「イヌはもういない」
 あ、とみるみる涙をせりあがらせた氷河が窓辺へと近寄り、下をのぞきこんで、膝から崩れ落ちる。
 カノンは満足げに頷いて、ミロへ視線をくれる。
「次はお前の番だ」
 ミロは慄く。
 まさか氷河を殺せとでも?犬っころ一匹のことで?
 ミロの表情が変わったのをカノンが笑う。
「あそこまでしろとは言わん。お前が言ったんだろう。『子ども』だと。子どもに躾をしてやるのは大人の役目だとは思わんか」
 言って、カノンは立ち上がる。
 窓辺でうずくまっていた氷河の片腕を掴んで、部屋を横断するようにずるずると引き摺り、その身体をベッドへと叩き込む。あ、という引き攣れた叫びを喉奥で迸らせている氷河の服を引き裂いて裸に剥くと、カノンは、ベッドサイドへ座り、長い足を組んで煙草に火をつけながらミロを振り返って唇の端を上げる。
「何をぼうっとしている。躾をするのはお前だ、ミロ。男の味は知らんのか?」
 カノンの言うところの『躾』の意味に気づいてミロの血が煮える。
 何て奴だ、この下衆め……!反吐が出そうだ!
 ミロの拳がぐっと握られたのを見て取り、カノンの瞳が細められる。
「イヌの臭いがまだするようだ……」
 カチ、と撃鉄が起きる音がして視線をやればカミュの握った銃口はミロの方を向いていた。
 カミュ、お前は平気なのか……!あれほどお前を慕い、お前も可愛がっている少年だろうに……!
 氷のような男、と呼ばれているが、その冷たさときたら絶対零度だ。
 ミロの瞳に混じった非難に気づいたのか、カミュの向けた銃口はミロではなく氷河の方へ向けられた。そちらの方がミロにダメージを与えられることを知っているかのように。
 カノンは黙って冷たい瞳で三者を観察している。
 引き金にかけたカミュの人差し指に、く、と力が籠められる。小犬を撃った時の動きはまるで躊躇いもないものだった。
 許せ、氷河。君の命には代えられん。
 覚悟を決めて、ミロは氷河に覆いかぶさった。

 暗転

 乱れたベッドの上、声のかけようがなく、ミロは氷河の頭をただ撫でる。
 部屋にはもう二人のほかは誰もいない。
 目尻に涙痕残る氷河の腕が持ち上がってミロの手を掴む。
「あなたのせいじゃない。…………気づいたと思うけど、別に俺、初めてじゃないし。慣れている、こんなこと」
 もちろん気づいた。
 カノンとカミュの冷たい瞳に晒されて、氷河を「なるべく乱暴に見えるように」抱きながら、ミロはようやく、氷河の組織の中における役割を知ったのだ。
 荒事に駆り出されないわけだ。───色事の方だったというわけだ。
「カミュも君を抱いているのか」
「まさか。先生は俺には触れない」
 触れないが、ただし、仄めかすのだと言う。
 次に必要なのはこの情報だ、と。情報を手に入れるために、氷河は様々な男に身体をひらく。
 そうして得た情報でカミュはあっという間に組織の幹部へと成り上がった。
 カミュが氷河をこの上なく可愛がっていることは誰もが知っている。なのに、求められればその氷河の身体さえもカノンに差し出す、その忠義の姿勢が疑り深いカノンの信頼を勝ち得た所以だったのだ。
 あまりのことにミロは言葉もない。
 だが、氷河は健気にもカミュを庇う。
 自分が勝手にしていることでカミュがそうしろと言ったことは一度もない、と。
「あなたには俺達の関係は理解できないかもしれないけど。先生は本当にすごく優しい人なんだ」
「躊躇いなく何の罪もない小犬に銃を向けた、あれがか。君だって一歩間違えば殺されていた」
「……先生がそうすべき、と思ったなら俺は別に撃たれたっていい」
 理解できん、と繰り返すミロに氷河は笑う。
「あなたって変な人だな。この世界、そんなことで不思議がる人、誰もいない。皆、自分の利益になることだけで精いっぱいだ。俺を足抜けさせたがっているけど、あなたの方こそこんなごみ溜め、似合わないと思うけどな。あなたの本来の居場所はもっと光の当たるところって気がする」
 氷河の指摘に、ずいぶんと素を曝け出してしまっていたことに気づいて、ミロは慌てて取り繕った。
「俺が君達のことを理解できないように、俺にも君に見せてない一面はあるってことだ。俺は光に相応しい人間じゃないんだ」
 いつかは光の中へ戻りたい、とは思っているが。
 こんな世界、本当にまっぴらだ、とミロはますます、自分の任務に没頭していく。