お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)
オメガバース設定の学園もの妄想。カノ氷に始まり、ミロ氷を通って、最後はカミュ氷。
特殊な設定のため、社会規範に反する記述も登場しますが、それらの行為を肯定する意図は全くありません。完全なる異世界ファンタジーとしてお読みください。
◆トキメキ☆聖闘士学園~なんちゃってオメガバ~ ③◆
抑制剤はオメガであれば合法的に手に入る。
オメガの発情期をめぐっては時に犯罪まがいの行為が横行することがあるため、それらのリスクを低減させるために必要だからだ。
正面切って申請さえすれば簡単に手に入るものだが、申請の過程で人に知られることを恐れるオメガは多く、それゆえ、不法取引される抑制剤も多い。
だが、法に縛られないものにはすべからく危険はつきものだ。
高額であるだけならまだよい方で、抑制剤とは名ばかり、質の悪いセックスドラッグが面白半分に紛れ込まされていることもある。
それを見極めるのはカノンの勘と経験だ。
かつて、少々(あれが少々であるものか、と兄が怒りそうだが)、やんちゃをしていた経験からそのあたりの危険には鼻が利く。
限りなく合法の抑制剤に近い良質なものを手に入れて再訪を待っているのに、そういうときに限って氷河は来ない。
来ないということは、つまり、氷河が問題なく学校生活を送れている、という意味であるので、カノンの方からわざわざ氷河を訪ねてはいない。
遠目に彼の姿を見て、何事も起こっていないことを確認するのがカノンの日課になっている。
ただ、氷河は来ない代わりに、珍しい来訪者が校務員室にあった。
パンクした生徒の自転車を直してやり、繁殖した池の藻をすくって水をきれいにしたところでそろそろ休憩にするか、と、校務員室に戻ってみれば、赤髪の化学教師が居心地悪げに校務員室の中に座っていた。
「勝手に入っては悪いと思ったのだが」
「おかしなことを気にするな。私室ではないのだから誰が入ろうと自由だ」
そう言ったものの、ほとんど毎日、カノンが校務員室に寝泊まりしているためか、私室同然に生活感あふれる洗濯物やら歯ブラシやらが散乱しているのもまあ事実だ。礼儀作法にうるさそうなこの教師が、入室を躊躇ったのも理解できる。
ジッパーをおろしてつなぎの作業着の上だけを脱いで、汗をぬぐいながら、小さな冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、自分の喉をまずは潤してから、ようやくカミュを振り返って、「飲むか?」と聞いてみたが、必要ない、と彼は首を振った。
「何か直してほしいものでも?それとも、薬品の処分か?」
そう聞いたのは、我ながら意地悪だった、とカノンは思う。彼が部屋の中にいるのを発見したときから、用件はもううっすらと察していた。
前置きも何もなく、案の定、彼の口から「氷河が、」と発せられため、思わずカノンはくすりと笑ってしまった。
「……何がおかしい」
「いや、すまん、なんでもない」
涼し気な容貌をしている化学教師の眉根に皺が寄る。生徒たちは鬼だと言って恐れているようだが、カノンに言わせれば、機嫌の悪さが表情に出てしまうあたり、可愛げがある。
「うちの氷河がしばしばあなたの世話になっているようだが」
眼鏡の縁を触りながら、カミュはそう言った。
「うちの?」と、これまたカノンは危うく笑ってしまうところだった。かろうじて飲み込んだが頬は引きつったかもしれない。
担任だというのならともかく、ただの部活動の顧問が、血縁関係があるわけでもあるまいし、一生徒に対してずいぶんとまあ。
「別に世話などは焼いていないが」
「だが、よく出入りしている」
よほど気にかけているのか、出入りの頻度まで知っているとは。
化学教師とは暇なのか。
「それが何か?」
「いや……礼を言わねばと」
なるほど。どうやらそれを名目で探りを入れにきたのに違いない。
「別に礼を言われる筋合いはない。氷河に限らず、生徒はみな、ここへは自由に出入りしている」
「……そのようだな」
カミュの視線は、誰かが忘れていったらしい教科書へ注がれている。
「………………氷河はここで一体何を?」
そらきた、とカノンは苦笑した。
「別に何も。話をすることもあるし、具合が悪いと言って転がっていることもある」
「……………そうか」
思案顔なのは、氷河から聞いた話と齟齬がないか確認でもしているに違いない。
「俺は教師でもない身、生徒の息抜きになるならと出入りするのを放っておいたが、エスケープの黙認はやはりまずかったのか?必要なら、次からは厳しく叱り上げて首根っこ捕まえて教室に引きずり戻すが」
カミュのような男は譲歩に弱い。のらりくらりと逃げるのをやめて、早々に、極端なほどの提案をしてみせれば、案の定、いや、とカミュは口ごもった。
「そこまでするには及ばない。……氷河のその件は解決している。教室を苦手だというからわたしが個人的に教えることにした」
個人的に?と今度はカノンの眉間に皺が寄る番だ。
「どこで」
「まさか自宅に招くわけにもいくまい。わたしの準備室で空いた時間に課題を少し見ているだけだ」
準備室というと、あれか、あの狭い化学準備室か。
俺ならあんな空間にオメガと二人でいたら、確実に我を忘れてしまいそうだが。
「その……お前は、平気なのか」
「?まあ、負担は負担だが、幸い、今年は担任を持っていないから、氷河一人を教えるくらいの時間は取れる」
いや、そういう意味ではなく、とカノンは眉間に皺を寄せたまま唸った。
やはり彼はベータなのだろうか。
だが、この流れで唐突に、お前はベータなのか、と聞くわけにもいかない。
聡い彼のことだ、それを聞いた瞬間に、氷河がオメガであることを察してしまうに違いない。
二人きりになって問題が起きていないなら、カノンが口出しをするのはおかしな話だ。
そうか、それはよかった、と言ったものの、氷河が授業を抜けているのを咎めたいのでなければ、カミュが何をしにここへ来たのかがよくわからない。
「ほかに何か氷河のことで気になることでも?」
「……いや、問題は何もない。ただ……」
カミュはそこでしばし言い淀んだ。そして、長く葛藤した末に、「いや、なんでもない」と首を振り、「すまない、邪魔をして」と言って去っていった。
よくわからない男だ。
ただ、念のために、彼の性属性は調べておく必要があるな、とカノンは考え込むのだった。
*
5限目は担当教員が急な出張とかで自習だった。
真面目な一部の生徒は課題に勤しんでいたが、大多数の生徒は、思い思いに近くの席のものと話に花を咲かせている。
氷河は、というと、窓際の後列でぼんやりと外を眺めていた。
中庭の欅をカノンが剪定しているのが見える。
氷河と目が合うと、ふ、と口元を緩めてカノンが笑った。
以前はほとんど毎日のように通っていたのに、そういえば最近校務員室に寄っていないな、と氷河は思う。
空いた時間は化学準備室へ行っているせいだ。
授業の入っている時間はさすがに鍵がかかっていて無人だが、そうでないときはたいていカミュはそこにいる。
近頃では、行けば、授業に出られなかった理由はいちいち聞かず、「どの教科だ」と聞いて、自習の補助をしてくれるようになった。わりとしょっちゅう、同じことを二度言わせるな、とか、努力をしない者にはわたしは教えない、とか、手厳しい叱責を受けていて、普通に授業を受けていた方がよほど楽なのだが、それでも、自分の専攻でもない教科の面倒を見てくれるのだから、例えそれが顧問としての責任感から来ていることだとしてもありがたいことは確かだ。
カミュは厳しく、いつも何か怒ったような顔をしていて、その取りつく島のなさと言ったら冷酷とも言えるほどだったが、だが、一緒に過ごす時間が長くなるうちに、存外とやさしい面があることも見えてきた。
さすがに、わざと授業をサボってまで通いつめたりはしないが、教室に入れなくなってしまった時の行き先に、真っ先に選んでしまうほどには、多分、カミュとの時間は好きだ。
息抜きに水泳の話で盛り上がれるところも楽しいし、何より、濃い薬品臭に囲まれているせいか、カミュといるときは、己の第二の性属性を意識せずにいられる。
だが………永遠に忘れていたくて、意図的に考えないようにしていたが、問題が解決したわけではないのだ。
久しぶりに見かけたカノンの姿にそのことが思い起こされて、氷河の気持ちはやや沈む。
カノンは、確か、抑制剤を手に入れてくれると言っていた。今日あたり、校務員室に寄ってみるべきかな、と氷河は小さくため息をついた。
「……な?聞いてる?氷河?」
不意に名前を呼ばれて、氷河は慌てて窓の外から教室へと視線を戻す。
見れば、近くの席のものが数人、氷河を中心として小さな輪を作っていた。
「………なんだ」
「お前はどうなんだよって聞いたんだよ!ほら!あっちの話」
そう言ったのはサッカー部の星矢だ。
氷河の、話しかけるなオーラにも怯まずぐいぐいくる、稀有なクラスメイトの一人だ。
人に構われるのは好きではない氷河だが、星矢のことはなぜか嫌いではない。
年頃の男らしく、それなりに下世話な話もしてくるが、陽性の気質のせいか、彼からはあまり厭らしさは感じない。体育の着替えの際に、「うわ、氷河の背中ってなんかエロくね!?」とからかわれたときも、「お前みたいなガキから見ればなんだってそう見える」と返す余裕さえあった。
「あっちってどっちだ」
「だーかーらー、ほら、みんな何でヌいてるのかって話だよ。好みとかあるだろ?」
「ぬく?」
俺はな、おっきいのがいいな!こーんなの、と星矢が胸の前で、両手のひらでこんもりとした山を作ったことで、ああ、猥談か、と氷河もようやく合点した。
「人にする話じゃない」
けんもほろろにそう言えば、却って星矢の目がキラキラと輝いた。
秘密にされると余計気になるじゃん!お前、モテるからもしかして自分でする必要ないほど選り取り見取りだったりするわけ!?と星矢が音を立てて椅子ごと近寄ってくる。
な、な、俺だけにでいいからこっそり教えて、と言って星矢が氷河の肩を抱く。ずるいぞ、とからかう周囲の人間は、だからと言って、やはり近寄りがたいのか、数歩距離を置いたまま様子をうかがっている。
困った。
激しく困った。
くだらない、と席を立とうにも、星矢ががっちり氷河をつかまえてしまっている。強引に立ち上がれば、酷く険悪な空気となることだろう。
適当に濁して逃げたいところだが、そもそも、答えようにも、そういう行為そのものが氷河は好きではない。精通はもちろんとうの昔に迎えているが、性欲を感じること自体があまりない。他者が、自分に対しておかしな情動を抱かぬように気を遣うのに精いっぱいでとても己の欲どころではないからだ。
「選り取り見取りまで言わなくてもさ、好きなやつくらいいるだろ?今いなくても過去にとか?まさか、学年一バレンタインのチョコもらうくせに、初恋もまだとか言わないよな?お前の顔で、そういうの、嫌味でしかないからな!!」
何が嫌味なのかよくわからないが、そのまさかだ。
他人をそういう目で見たことがない。氷河にとって他人とは、己に対して欲情する厄介者か、気づかないでいてくれるありがたい鈍感者か、だ。
ぐっと押し黙った氷河に、星矢が、「え?まさかお前マジで、ピュアな天然様かよ?この年で?」と若干のおののきを見せている。
バカにされたようでさすがにムッとして「そんなわけあるか。好きなヤツくらいはいる」と勢いで答えてしまった。
うそ、マジで、誰誰誰、と星矢に大騒ぎされて、これなら「ピュアな天然様」に甘んじておけばよかったとすぐに激しく後悔する羽目になったのだが。
「同じ学校?」「年上?年下?」「かわいい系?きれい系?」という矢継ぎ早な星矢の質問に、行きがかり上仕方なしに「そう」「上」「きれい…だと思う」と短く答えながら、氷河の脳裏にあったのはカミュの姿だ。深い意味はない。星矢が言った「好き」の意味とは大いに違うが、例え尊敬でも友情でも好意を抱けるほど、交流のある人間は片手でも余るほどしかいない。厄介者か鈍感者以外の例外を必死に探して、そこにたどり着いただけだ。この場から逃げられるなら別に誰を想像してもよかった。たまたま、最近一番よく接触していたのがカミュだったに過ぎない。それだけだった、本当に、この瞬間までは。
それが違う意味に変わったのは、星矢が、「好きな人いるんならさ、やっぱエロい想像、しちゃうよな、男なら」と耳元でささやいてニッと笑ったからだ。
エロい……??としばし意味を考えて氷河は目を瞬かせる。
考えてもみなかったが…………ただ、「エロい」かどうかは別にして、想像するまでもなく、衣服を纏わぬ生身のカミュを見たことは、ある。
いや、完全な裸身ではもちろんない。でも、当たり前だが水の中にいるときのカミュは普段の白衣姿ではなく、ほとんど裸身も同然なわけで。
数えるほどしか目にしたことがなく、それもそういう意味でじろじろ見たわけではなかったが、白衣姿からでは想像もつかないほど逞しく隆起した筋肉が覆う体躯が水を蹴る様は確かに目を奪われるほど美しく、ああ、俺もあんな身体だったらいいのにな、と何度見惚れたかしれない。腰まで流れる赤い髪が、水から上がる瞬間に引き締まった身体にまとわりつき、それを、カミュが煩わし気にかき上げる様は、言われてみればたしかに言い表せぬ色香を纏い……
そこまで考えた瞬間に、ぶわ、と氷河の全身が、信じられないほど熱を発して、大きく心臓が脈打った。
………え……っ…?
まるで悪い流行り病にやられたみたいな、異常な熱を突然発しだした己に慄いて、氷河は混乱する。
火照った身体が激しく震え始め、はあはあと、呼吸が乱れる。そればかりではない、腹の奥がじいんと疼き、切ないような、寂しいような、何かわからぬ切望感が全身の細胞一つ一つまでを支配する。
なんだ、これ。
何かわからないが、無性に───欲しい。
何が?
わからない。何かはわからないが、何かを狂おしく、欲しい、と思う、あまりに強く激しい切望感で、意識はかすみ、がくがくと氷河の膝は笑う。
「……氷河…?」
氷河を抱えていた星矢にも、異常は伝わったのだろう。
椅子からずるずると崩れる身体を支えながら、「え、お前、大丈夫かよ……?熱……?」と気づかわしげに氷河をのぞきこむ。
星矢に触れているところ全部が熱い。そればかりではない。星矢に、もっと、触れてほしくてたまらない。
ああ、違う、そうじゃない、星矢はただのクラスメイトだ。なのに、これは。これは───
ヒートだ。
カノンは顔を跳ね上げて、先ほどまでブロンドがのぞいていた窓を見上げた。
今はその姿はもう見えない。
だが、まだそこにいるのは確かだ。
爆発的に高まった、甘く、雄を誘う熟れた果実のような濃厚な気配に、カノンの中の本能が刺激されてくらくらとしている。
まずい事態になった。
抑制剤を渡しそびれているうちに、氷河に初めての発情期が訪れてしまったのに違いない。
今、あの教室には生徒しかいない。
対処できる大人が誰もいない。
───いや、生徒なら皆ベータだ。下手にアルファの教師が傍にいなかったことは結果的には幸いしたかもしれない。よほど敏感なベータ以外は、氷河に何が起こったか理解できるものはいないはずだ。
カノンは剪定鋏を放って、枝を伝って氷河の教室の窓まで近づいた。
案の定、氷河の席のあたりに小さな人の輪ができているのが見える。
ち、と舌打ちをして、カノンは勢いをつけて、開かれた窓から教室の中へと飛び込んだ。
突然の闖入者に、生徒たちが驚いた顔をしている。
「……え、こ、校務員さん……??」
「ま、窓……?え……っ?」
生徒たちも大混乱だろうが、カノンだってそれどころではない。
後先考えずに飛び込んだが、発情期のオメガの発するフェロモンを甘く見ていた。
真っ赤な顔をして蹲り、ほかの生徒に抱きかかえられて息を乱している氷河の瞳が救いを求めるように動き、かのん、と安堵したように名を呼ばれたが、その声だけで理性の糸が切れるのではないかと思うほど、激しく、暴力的な勢いで情欲の炎が燃え上がる。アルファがオメガの放つフェロモンに抗えないことは頭では理解していたが、実際に間近で体感するそれは、予想以上に強烈だった。
だが、ここで理性を失ったのでは、助けに来たのか窮地に陥らせに来たのかわからない。
「おい、そいつ、吐きそうだぞ」
生徒に不審を抱かれないようさりげなく氷河を教室の外へ連れ出して、などという余裕のある芸当はできそうになく、思考の回らない頭が思いついたろくでもない言い訳を放つと、それでも効果はあったのか、えっ、と氷河の周りの輪は、一様に一歩ずつ外へと広がった。
「俺が保健室へ連れていこう」
だから貸せ、と腕を伸ばしたカノンの動きは、氷河を救い出そうとしているより、獲物に食らいつく肉食獣のような乱暴なものとなった。
氷河を抱えた少年が、保健室なら俺が、と心配そうな顔をしたが、半ば強引にカノンは氷河の身体を奪い取った。
腕に抱えた瞬間に、ぶわ、とカノンの身体がまた熱を上げ、理性と本能との激しい葛藤に汗がだらだらと流れ落ちる。
保健室へ、と言ったものの、校内を、この刺激的なフェロモンをまき散らして歩くのは賢明とは言えない。
カノンは、ちら、と窓を見やった。
そして、次の瞬間には氷河を抱えて、窓枠を蹴り、大きく枝を広げた欅へ飛び移っていた。
片腕で枝を掴みながら、最短距離で地上を目指したカノンを、生徒たちはぽかんと見下ろす。
「え、ええ……?」
「ここ、3階……」
「な、何者……?」
生徒たちのざわめきを背に、地へ下り立ったカノンは、そのまま大股ですたすたと中庭を横切っていく。
校務員室にも戻れない。すぐ傍は、アルファばかりの職員室だ。
「カノン……俺……」
「っ!……口を開いてくれるな……!」
参った。
発情期のオメガというのは声でまでアルファを誘うのか。普段の彼の声をどうこう思ったことは一度もないが、今はやけに甘く鼓膜を震わせるそれが、理性を手放せと誘惑をしてくる。
校舎裏へたどり着いて、カノンは、そこへ停めてあった、濃紺のマセラティのドアを開けると氷河の身体を押し込んだ。
近頃はほとんど用なしとなっているそれは、カノンの愛車なのである。
もちろん校務員の薄給で手に入る代物ではなく、やんちゃ時代の遺物だ。迫力のある重低音を響かせるエンジンと流線型のボディは気に入っていたが、街中で乗り回すのには向いているとはいえず、維持費もバカ高いため、売り払って、機能重視で軽トラでも買うかと思っていたが、まだ売り払っていなくて幸いだった。
深く沈む運転席のシートに身を滑らせてエンジンをかけたが、狭い車内に既にみっしりと濃く漂う甘い香りに、思いのほか乱暴な発進となった。