お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)
オメガバース設定の学園もの妄想。カノ氷に始まり、ミロ氷を通って、最後はカミュ氷。
特殊な設定のため、社会規範に反する記述も登場しますが、それらの行為を肯定する意図は全くありません。完全なる異世界ファンタジーとしてお読みください。
性表現あります。18歳未満の方、閲覧をご遠慮ください。
◆トキメキ☆聖闘士学園~なんちゃってオメガバ~ ④◆
カノンの向かった先は己の自宅だ。
校務員室に寝泊まりしているカノンだが、一応、別に住み家はある。
カノンの住み家、というか、カノンとサガとの、と言った方が正しいのだが。
いい年して兄と二人暮らしなどぞっとしない、と、カノンはあまり自宅を自宅と呼べるほど寄り付いてはいなかったのだが、咄嗟の安全地帯としてほかの選択肢を思いつくだけの余裕はもう失われていた。
地下の駐車スペースに愛車を頭から突っ込ませて、助手席の扉を外から開けば、氷河はもう姿勢を保つこともできなくなったようで、背もたれにぐったりと身体をもたれさせ、荒い息をしていた。
膝裏に手を差し入れて氷河の身体を抱え上げる。
濃厚な甘いフェロモンの中に混じる、汗と、それから牡の放つ精の香りが、ぶわ、と一気に強くなって、カノンはあやうく氷河を取り落とすところだった。
耳元で、「……ごめん、車、濡れたと思う」と涙交じりの鼻声が囁くに至っては、エレベーターが最上階へ到着するのも待てずに我を忘れてしまいそうになる。
どうにかこうにか、奇跡的に理性を保って、ほとんど蹴破らんばかりの勢いで玄関扉を開け、カノンは、まっすぐにバスルームへと向かう。
サガの趣味でやたらと広くゴージャスなバスルームの乾いた床に氷河をそっと下せば、彼は、両腕を身体に巻き付けるようにしてひくひくと震えながら、ひどく苦し気に呻いた。初めて発情期を迎えたばかりで、狭い車内にアルファと閉じ込められたのは彼にはほとんど拷問だったのかもしれない。伸びた前髪に目元は隠れているが、かわいそうに、よほど辛かったのか頬が濡れていた。
くらくらと誘惑し続ける匂いに、カノンの方もうっかりすれば何もせぬうちに吐精してしまいそうなほどに昂っていたが、その不憫な様にかろうじて自制をして、カノンは立ち上がった。
「着替えを取ってくる。湯をつかっていていいぞ」
そういってバスルームを出て、廊下を通り、リビングにつながるキッチンまで距離をとって、ようやくカノンは、は、と息を吐きだした。
両手をシンクの縁へついて、なんてことだ、と唸りながら首を垂れる。
これだけ距離を保っていてもまだきつい。
よく磨かれたシンクのステンレス部分に映った、発情した獣のごとく、凶悪な面をした己と目が合って、カノンは呻いた。
オメガを奪い合って犯罪も起きるはずだ。理性をなくすどころか、まるきり己でなくなってしまうような、あれを俺のものにしたい、という、暴力的なほどの征服欲が雄の情動となって腹の底に熱く滞留している。
細胞に刻まれた本能に抗うことは、酷い苦痛を伴う。水の中へ沈められて酸素を求めるかのごとく、カノンの中のアルファ性は、手に入れられなければ死んでしまうほどの強さでオメガを希求している。どれだけ厳しく己を律していても、呼吸をせずに生きられる人間はいない。
カノンはグラスを取り出して、蛇口を開いて水を注いだ。
一気に飲み干して人心地をつけ、そして、作業着の尻ポケットから、薬袋を取り出した。
抑制剤。
手遅れになったが、既に起こったヒートを抑える効果まであるだろうか。
駄目で元々で飲ませてやってもいいかもしれない。
カノンにもこれだけの苦痛をもたらしているヒートは、当の本人にはなおさらきついだろう。少しでも苦痛の時間が減らしてやれるなら御の字だ。
新しいグラスを取り出してもう一度水を注ぎ、何度か深呼吸の末に、カノンはバスルームへと戻った。
あの状態では、おそらく、てきぱきと湯を浴びたりはできないだろうな、と思っていたが、曇り戸の向こうからは水音どころか気配すらしない。
まさかと思うが、死んだりはしていないだろうな、とにわかに心配になる。
オメガの希少性はその死亡率の高さによる、と言われている。適切なアルファと出会えなかったオメガは強すぎるヒートをどうすることもできずに心を病み、壊れた心が肉体までを蝕んでしまうのだ。
「氷河」
大丈夫か、の意味にそう声をかけたが反応はない。
開けるぞ、と言って、ノブを回した瞬間に、「着替えを取ってくる」と言って離れておきながら、その着替えを忘れた、ということに気づいたが、薄く扉が開いてドア向こうの空間と繋がったことで、着替えのことなど頭から飛んでしまった。
氷河はカノンが去った時とまるっきり同じ姿勢でまだうずくまっていた。
だが、さきほどより纏う空気が濃い。
「……ッ!」
ぶわ、と一気にカノンを包み込んだ甘い香りにくらくらして、カノンはがくりと膝をつく。
「……飲めるか。抑制剤だ」
氷河へグラスを差し出すカノンの手が、らしくなく、震えている。
抑制剤、と聞いて氷河がのろのろと顔を上げた。
眩しいほどに透き通って潔癖さすら感じさせていた青い瞳が、焦点を失ってどろりと淫蕩にとろけている。
「……こ、んなに……つらいなんて……きいてない……」
まるでカノンを詰るような恨み言は、だから、責任をとってくれ、と誘われているようにも聞こえた。都合よくそう聞いてしまうのは、己の中のアルファ性の仕向けた罠かもしれないが。
氷河は額に玉のような汗を浮かべて、身をよじり、腹を押さえて、蕩けた瞳に涙をにじませている。
「……ここ、おかしくて……カノン、もういやだ……俺、……」
わかっている、だから飲めと言っている、と返したカノンの声はほとんど怒鳴り声だった。
だが、カノンがオメガの声に誘惑されるのと同じに、氷河の方でも強いアルファの声は刺激的に過ぎたのか、彼はびくりと全身をわななかせると、あ、あ、と甘い声をこぼしながら小刻みに痙攣した。触れもしないのに声だけで極まってしまったのだ、ということはいっそう強くなった精の香りで知れた。
信じられない。オメガを目にするのは初めてではないが、これほど敏感に反応するオメガには出会ったことがない。
おかしくなりそうなのはこっちの方だ。
カノンのつなぎの作業着の下でも、男の熱が、臨界寸前にまで昂って、はちきれんばかりに存在を主張している。
発情したオメガを目の前にしていながら何もせずに耐えろというのは、ふんだんに酸素のある空間で、自ら息を止めて窒息死せよ、という、神にしか不可能な御業を強いられているようなものだ。
健康な機能の備わった、むしろ、強くその性属性を発露しているアルファの雄であるカノンには、もうすべてが限界だった。
ああ、くそっ、と短く吐いて、カノンはまだ極みの余韻に震えている氷河の唇に指を突っ込んでこじ開けた。
薄いオレンジのカプセルを氷河の舌の上へ乗せ、カノンはグラスを傾けて己の口に水を含む。
氷河の唇へ己のそれを重ね、強引に口腔に水を流し込めば、氷河の喉がこくりと動いた。
けほけほ、と少し咳いた後、氷河の震える声が、「…………きかないじゃないか……」と、涙で揺れる。
そんなにすぐに効くわけがない。
カプセルが溶けるのも待てないくらいつらいのはカノンも同じだ。
カノンは氷河の制服の胸ぐらをつかんで床へ押しつけるようにのし掛かった。汗と涙と吐精でぐちゃぐちゃに濡れた制服を、制御を失った手が乱暴にはぎ取る。着替えをさせてやるつもりなのだから、という己への言い訳も吹き飛ぶほどの荒々しさに、ボタンはぷつぷつと弾け飛ぶ。発情期のオメガは痛みすら愉悦に変えると聞くが、まさにその通りに、手荒くのしかかられているというのに、氷河は、ふあ、と甘く喘いだ。
裸に剥かれて外気にさらされた氷河の若い雄は、何回精を放出したのか、かわいそうなほどびっしょりと白濁に濡れて、だというのに、まだ腹につくほどに張りつめて、透明な蜜をとろとろこぼしている。
手のひらで包んで白濁を拭うようにゆるりと扱けば、氷河はふるふると首を振って、薄く筋肉で覆われた腹へ手を当てて、かのん、と甘い声ですすり泣いた。
「……俺、かのんならいい………だから……」
楽になりたい、ここがさみしくておかしくなる、と、うっすらと水の膜を張った瞳が、日ごろの少年からは嘘のような艶めいた色でカノンを誘う。
まだ男を知らない氷河の語彙ではそれが精いっぱいだったのだろう。誘惑にしてはずいぶん拙い言葉だったが、だが、それがだめ押しになった。さみしくなるほど欲されて、完全に理性は飛んだ。
荒々しい動きでカノンは己のつなぎを脱ぎ、片腕で氷河の腰を引き寄せる。
大きな手のひらで濡れた下肢の間をまさぐり、引き締まった臀部の間に中指を這わせれば、ひぁっ、と声を上げて氷河の背がしなった。
「……あ、あぁ…っ」
普段は慎ましやかに閉じているに違いない秘所が、熱くぬかるんでいる。
ぬぷぬぷとカノンの指が根本まで沈めば、それだけで、いく、いく、きもちいい、なんだこれ、あ、あ、と素直な愉悦に喘いで、氷河のつま先がきゅ、と丸まり、また全身が痙攣した。
愛撫など全く必要ないほど滴る甘露は、カノンが媚肉を擦るたびに、ぐちゅ、という水音を響かせ、指をとろとろ伝ってカノンの手首までを濡らしている。
いった、もういったのにまたいきそう、と髪を振り乱しながら、かのん、やめないで、もっといっぱい、と氷河は強請るように腰を揺らめかせる。
我を忘れていても、昂った己自身をいきなり彼の中に突き立ててしまうほど、カノンの経験が浅くないことは互いにとって幸いだった。
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音をたてるほど濡れてはいても、だが、まだ未通の氷河のそこはカノンの指ですらきつく締め付けていて、経験のなさからくる性急な求めにそのまま応えたのでは、一時的には愉悦を生んでも後で辛くなることは目に見えている。
必死にしがみつく身体をなだめるように、そこかしこを唇で愛撫してやれば、どこもかしこも感じてしまうのか、氷河は身も世もなく善がって甘い声を迸らせた。
指を増やして馴染ませるようにゆるゆると動かせば、拙く氷河の腰が揺らめき、びしゃびしゃに濡れた肉は、奥へ誘うようにきゅ、きゅ、と何度も絡みつく。
腹側へあるこりこりとした膨らみを指の腹で押せば、ああっと、氷河の指が加減を失ってカノンの背中へ爪を立てた。
つらい、がまんできない、ほしい、たらない、もっといっぱい、ちがう、おく、ここ、ここがさみしい。かのん、かのん、かのん。
うわ言のような喘ぎはほとんど音とはなっていなかったが、熱い吐息とともに、耳元で囁かれ続けてはたまったものではない。
痛みを与えないほど、馴らしてやれたかはわからない。
ひどい、かのんひどい、たらないのにどうして、とすすり泣く声に負ける形でカノンは熱く高ぶった己を氷河の隘路へ押し当てた。
「……っ、あ、ふ、……んぁ……ああーっ」
みっしりと肉の間を満たしていく熱い塊に、氷河のこぼした甘露がくちゅりと押し出されて、タイルの上へ小さな水たまりを作る。
柔く、熱く、カノンを包みこむ媚肉は、先端を含ませただけで暴力的なまでの官能をもたらし、途中から、成熟したばかりで色事に不慣れな身体を気遣う余裕はなくなって、カノンはぐっと一気に氷河を貫いた。
分別のあるふりをして愛撫に時間をかけたのも台無しなほどの強引な挿入は、自分で求めておいてもさすがに苦しかったか、のけぞった氷河の喉が、声なくひくひくと震えている。
息の整う間も待たず、堪えていた鬱憤をはらすかのような激しさで腰を打ち付ければ、氷河は髪をふり乱して、いやいやと首を左右に振った。
おおきい、むり、と唇の動きは拾えたが、あれだけ誘われた後で今更のその抗議は男の熱を煽ることはあっても止める理由にはならない。
深く突き入れるたびに、ぱちゅ、という水音とともに、とん、と奥へ当たる感覚がある。氷河は身悶えして、呼吸を求めてはくはくと唇を動かして、待って、かのん待って、と涙を散らしているが、苦痛を感じているわけではない証に、彼の伸びやかな両下肢はカノンの腰へ絡みつき、二人の腹の間で擦れる雄茎はもう何度達したかしれぬのにぎちぎちと張りつめたままだ。
単に、射精を求むだけの官能ならもう十分すぎるほどだ。いきり立つカノンをあやすようにきゅうきゅうと吸いつく氷河の濡れた肉はそれだけでぞくぞくするほど気持ちいい。普通の情交などとはまるで違う、オメガのフェロモンはまるで麻薬のようにカノンを経験したことのない官能へと導いていく。
だが、厄介なことに、本能がもたらす衝動はそれだけでは終われなかった。
まだカノンは全てを氷河におさめきってはいない。
それが気が狂いそうなほど切なく苦しい。
氷河の最奥をこじ開けねば気が済まない。
己の全てを含ませて、全部、俺のものだ、としないことには。
ゆるゆると氷河を揺さぶりながら、カノンは、は、と熱い息を吐き出した。
「息をしていろよ」
腹をかきまわす熱い塊がもたらす官能にようやく慣れつつあった瞳が、とろんと薄く開かれる。蕩けていた瞳が、息……?と怪訝な色を見せた瞬間に、カノンは彼の腰を肉が指の形に沈むほど強くつかんだ。
氷河より一回り以上も大きな体躯に物を言わせて、細い腰を抱え込むようにぐっと身を沈めたカノンに、氷河が息を呑んで首を振った。
「…っ、む、りだ……っ、ひ、あ、おく、ぁあっ、……んあ…………っ」
カノンの先端を締め付けている隘路が、氷河が腹を震わせるたびに、くぱくぱと収縮を繰り返す。口づけされているように吸い付く感触が刺激的過ぎて、カノンの汗が氷河の上へぽたぽたと飛び散る。
やがて、つぷん、と張り出した傘の部分が最奥をこじ開ける感触がしたかと思うと、カノンの下生えが氷河のそれに触れた。
深い挿入の衝撃に、氷河の足が空を蹴って、全身がわななき、意識はとぎれたか、がくりと身体から芯が失われる。
だが、それも一瞬だ、すぐに、かはっ、と乾いた呼吸音を響かせて、氷河は、音を結ばない喘ぎをもらして、全身を震わせてびゅくびゅくと白濁を腹の上へまき散らした。
「……ん、ふ、……ああっ、は、」
狭く締め付ける甘露の源は、もはや、細胞レベルでカノンをだめにするのではないかというほどの強烈な官能をもたらしていて、カノンは己の衝動に完全に身を任せて激しく彼を揺さぶった。過ぎる刺激に逃げる身体を閉じ込めるように肩を抱いて、深いところで抽送を繰り返す。氷河はもう喘いでいるというよりは声をあげて泣いていて、カノンが突き上げるたびに壊れたみたいにびくびくと全身を震わせ続けている。与えているのが苦痛ではないとわかるのは、カノンの凶悪なまでに昂った熱の塊を包む肉がじゅわじゅわと急速に潤いを増して、まるで悦ぶみたいに絡みついているからだ。
まったくもって性質が悪い。
いたぶって喜ぶような趣味を持ち合わせていないにも関わらず、もっと泣かせてしまいたい、という衝動が抑えられない。入るつもりでなかったこの沼は底なしだ。
あまりの官能の暴力に、普段よりずっと短い時間で、カノンは彼の中へ滞留し続けていた熱を吐き出した。性へ目覚めたばかりの頃ですらこんなことはなかった、と思うほど、余裕なく、本能に衝き動かされた極みは、だが、信じられないほどの多幸感をもたらした。
頬を濡らした氷河が、カノンがまだ収まっている腹をぬるぬると撫ぜ、すごい、あついぃ、と言いながらもらす嗚咽にも愉悦の色が交じっている。
カノンは氷河の足を己の肩へ抱え上げた。
一度吐き出したくらいでは全くおさまれないほど、まだ、腹の奥は熱く滾っていた。
【補足】
よく考えたら、わたし、カノ氷R18書くの初めてでした。こんな特殊設定で書いてよかったのかーと頭を抱えましたが、こんな特殊設定でもない限り、そうそう越えていい一線でもないと思うので(年齢差的に、気軽に一線を越えられてしまうとカノン、お前ぇ、ってなる笑)、致し方ない。でも、ちゃんと理性があるカノンだったらもっとでろっでろに甘やかすよね……まあ理性があったら一線越えないわけだけど。
遺伝子レベルで紳士なミロと違って、ちょい悪な本性を抱えてるカノンが我を失ったらどうなるんだろうなーと考えつつのカノ氷なのでした。