寒いところで待ちぼうけ

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Aurorachipのるいさまからのいただきもの
ツイッターで『「足腰立たなくなるほど師に厳しく扱かれて」って表現が18禁ワードに見えた』って呟いたところ、るいさまが2種類のSSの形にしてくださいました


◆足腰が立たない正午(健全ver)◆

足腰が立たなくなるほど師に厳しくしごかれて、俺はごろりとその場に転がって天を見た。

近づいてきた師の顔が太陽を隠して見えない。
声を出そうにも、喉もひりついている。

「限界か?」

その言葉にもう一度立ち上がろうと試みたが、師が俺の額を少し押しただけで、再び体が崩れた。

「一時間休憩だ」

そう言うと、師は背を向けて宮に戻っていった。

ここは宝瓶宮の裏。
緑の自然に囲まれて、軽い鍛練ができるほどのスペースがある。

甦ったカミュにもう一度修行をさせてもらえるように願ったのは他でもない自分だが、さすがカミュ。効率よく、俺の弱い部分を強化するような訓練を施してくれる。
真っ青な空を見ていると、流れた汗が目に入り、俺は瞳を閉じた。


「あの……」
俺ががばりと跳ね上がると、声をかけた青年は驚いて後ずさった。

そこには背が高く細身の青年が申し訳なさそうな顔をして立っていた。
宝瓶宮付きの従者だ。

俺は今の状況を思い返し、照れ隠しに頭を掻いた。
「あっ、すみません。つい眠ってしまったようで……」
鍛練の心地よい疲れに、眠ってしまったのだ。
眠るのは良いが、人がここまで近づくまで気づかないとは恥ずかしい。

ふと青年は笑った。
「お食事の支度ができました。カミュ様から、今なら間に合うぞ、と伝えるように言われましたよ」

「裏で伸びているから、と言われたでしょう?」
「ふふ、そのような感じです」
俺も笑って、体についた埃を払い落とした。
少し眠ったからか、体は回復して軽くなっている。
「よし。お食事を頂きに行きます。その前にシャワーかな」
「あ、カミュ様が、時計見ろとも仰ってましたよ」
従者の時計を見せてもらう。
カミュに休憩と言い渡されてから、もう40分経過していた。

「うー……。じゃあ食事です」
「はい」
にこやかな彼と共に宮の私室に入ると、カミュが食後のコーヒーを飲んでいた。

「起きたか」
「復活しました」

手と顔だけ洗ってカミュの前に座り、目の前にある皿を見ると、腹が鳴った。

「午後からも鍛練を続けるか?」
「そうですね……。腹ごなしに少し鍛練をしてから、精神面をお願いいたします」
「うむ」

師とともに訓練のメニューを考えさせてもらえるようになったのは、聖戦が終わってからだ。
かつてよりも、より高いレベルの訓練ができるようになり、俺は高揚している。
恐らくカミュも。

食事を摂りながら、俺はカミュと様々な会話を楽しむ。
聖闘士としての知識から、政治・経済面に至るまで。師との会話についていくためには、普段から勉強を怠ることは許されない。水瓶座の弟子はなかなか忙しい。

「氷河様、ご立派になられましたね」
皿の上の食べ物がきれいに無くなるのと同時に、先程の従者が俺にコーヒーを出してくれた。

俺は礼を言い、カップに指をかける。
「裏庭で伸びるくらいまだまだですよ」
「私がお会いしたのは、聖戦の前にカミュ様がお連れになって以来ですからとても成長されたように見えてしまいます」
「えっ?いつだろう」

「ああ。まだ氷河が十になるかならないかの頃じゃないか?」
カミュがその頃を思い出したのか、懐かしそうに笑った。

「すみません。その時のことは覚えているのですが……」
すまなそうに言うと、彼は柔らかく笑った。
「従者の顔まで覚えていないのは当たり前ですよ。他にも従者は居ますし、たくさんの人間が出入りしていましたからね」
「ありがとう。またその時の話をしてください。これからもよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。あなた方は私達の誇りですから」

「飲み終わったか?」
「はい。ごちそうさまでした」

俺達は合わせてもいないのに同じタイミングで立ち上がる。
「後片付け、よろしくお願いいたします」
「当然ですよ。洗濯物も出しておいてくださいね」

俺は軽く従者に挨拶をし、カミュと肩を並べて歩く。
「家事をしなくても良いなんて、ありがたいです。ただ少し落ち着きませんね」
「おまえは特にそうかもな。私はここに居るのも長いから」
「確かにそうですね」

「氷河。午前はおまえだけの鍛練だったが、午後は私も体を動かしたい。付き合え」
向けられた師の目が光るのを見て、俺は午前以上にしごかれることを確信した。

願ったりなのだけれどね。




(終)

***



 カミュ先生に扱かれれば扱かれるほど氷河は幸せそうですー!(言ってる端からこれ18禁SS読んだ後の感想になってない??えっちなワードを辞書で引いてにまにましてる中学生レベルの発想でお恥ずかしい限りですが、多分、カミュ氷というカプ自体がエロいんだと思います。た、たぶん)

(2018.2.15UP)