お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)
◆吸血鬼妄想 前編◆
ハロウィンといえば吸血鬼、ということで、各種カプにて妄想していた雑記より抜粋。
二次では鉄板ネタの吸血鬼もの。ご多分に漏れずわたしも妄想してみたい。
トップバッターはミロ。
吸血鬼もの、どっちを吸血鬼にするのかはお好みによると思いますが、個人的には受けが吸血鬼な方が好き。
例えば……ミロが氷河のうなじをカプっと、というのは確かに萌える。が、吸血鬼である必然性がない。普段からあのひと氷河のうなじカプカプしてるし。(見て来たかのように言いました)
じゃあ、氷河?
氷河がミロのうなじをカプっと……いいじゃない、滾るじゃない。
ミロ、血の気余ってそうだし。
でも、吸血鬼って血を吸ったら相手も吸血鬼に変えちゃうんですよね。(そんなこと言ってたら食事のたびに吸血鬼だらけになっちゃうので、そのあたりの設定は作品によって色々みたいだけど、今回はとりあえず古典的な設定で)
だったら、氷河、お腹が空いても咬まなさそう。
何百年、何千年の孤独(……似合うな、氷河)を生きる苦痛はあなたに負わせられない、なんて。
あなたは太陽の人だから夜に生きるのは似合わないよって、ひもじくても我慢する氷河をミロが放っておけるわけがない。アレです、聖衣に血をやったように、手刀で切った手首からの血をゴブレットに注いで氷河に飲ませるわけです。
これだと氷河はおなかいっぱいだけど、ミロは吸血鬼にならないもんね。
ゴシックホラーのドラキュラ伯爵のように、ミロは森の奥の城に住んでるの。
近隣の村を統べる領主サマなわけね。
ミロが昼間、外の世界へ出て見聞きしたことを、夜ごと氷河は楽しく聞くのです。
ミロの髪の毛の匂いを嗅いで、太陽ってこんな匂いなんだな、なんて嬉しそうに。
でもある日、ミロが吸血鬼をかくまっているのではないかという疑惑が村で持ち上がる。しれっとシラを切るミロだけど、日に日に疑惑は高まり、ミロの立場も苦しいものに。
村人はついに、ミロのいる城を包囲し、城を囲む森へ焼き討ちをかけはじめます。
で、ミロは決意する。
氷河に俺を咬ませよう。そしてこの地を後にする。
孤独を生きるつらさ、苦しさも、二人でなら。
でも、ただ咬め、と言ったのでは、氷河は絶対に自分を咬まない。
そこで一計を案じて、ミロは氷河を騙すのです。
氷河の大切なもの(マーマの思い出とか???)を穢して、氷河をものすごく傷つける。
氷河は怒りに燃え、その美しい青い瞳が魔性の赤へと変わり鈍く光ります。
「あなただけはそんな人じゃないって思っていたのに……!」
異形の者が持つ魔の力を解放させて、ミロを痛めつけ、追い詰めて、その身体を床へと引き倒して馬乗りになる氷河。
「あなたに罰を与えてやる……!」
氷河の牙が光ります。
口づけを受ける時のように目を閉じて甘い牙を待つミロ。
が、いつまでたっても、それは訪れない。
ふ、とミロの体の上から重みが失われる。
ミロが目を開くと、開け放たれた窓のところへ氷河が腰かけている。
その頬は涙に濡れて、赤く光っていた瞳は元の美しい青い色へと戻っていて。
「氷河……」
「俺にはあなたから日の光は奪えない。……あなたに会えて、あなたを通して太陽を浴びるのは……とても幸せだった」
「駄目だ、氷河!俺を一緒に連れていくんだ!」
「さようなら、ミロ。俺の……солнце(ソーンツェ=太陽)」
「氷河!!」
氷河の姿がふっと窓辺から消える。
慌てて駆け寄ったミロが外をのぞくと、闇の中ごうごうと燃える真っ赤な森だけがそこにあり、氷河の姿はどこにもない。
ただ、炎の燃える音に紛れて何かの翼が羽ばたく音が聞こえたような気がするのでした。
「違う、氷河……君がいないことの方が俺にとっては罰なんだ……」
あああ(滝涙)
悲劇になっちゃった。下手したらミロ、城と一緒に焼け落ちてもいいくらいの勢いで……。
いや、ミロならそこで簡単に死を選ばずに、諦めずに氷河を探し続けるかな。
うーん。
ミロだと悲劇に終わってしまった。
ではカミュ編。
カミュだとですね……氷河じゃなくてカミュが吸血鬼だといいです。今、受けが吸血鬼が好きとか言ったような気がするけど気のせいです!(多分、冥衣カミュからの連想で、カミュには『陰』のイメージがついている。)
長き孤独を生きていたカミュ、両親を失って暮らす家もなく、雪の中で倒れていた幼き日の氷河を拾うのです。
ちょうどそのころのカミュはですね、色々と人間に対して幻滅することが続いていて、人間嫌いになっているのです。
でも、元はとてもやさしいから、氷河を放っておけなかった。少し快復させたらどこかへ預け直すつもりだったのに、氷河が存外に懐いてしまって、今日こそは氷河を手放そう、今日こそは、いや、明日こそは、と、思いながらも、懐いてしまった氷河をカミュはどうしても手放せない。
でも、氷河を育てることで、カミュの凍りついた心は次第に柔らかくほどけていく。
氷河の方は、何故、カミュは夜にしか起きていないのだろう、とか、食事をとらないのはなぜだろう、とか、ほかの人間との違いが気にはなるけれど、月の光を浴びて、異国の、聞いたことがないような遠い昔の物語を話して聞かせてくれるカミュのことが大好きで。
ただ、時々見せるカミュの憂い顔のことは気になっていて、いつか、カミュを本当の意味で理解したい、と思うようになる。
幼かった氷河、でも、次第に成長していきます。
カミュに近づけたようで嬉しい反面、いつまでも変わらないカミュのことを少し不審にも思っていて。
カミュの方は、日に日に成長していく氷河が眩しくて仕方ない。
変化する命の美しさを愛おしく思い、でも、その変化は別れの時へのカウントダウンでもあるのです。
自分は永遠の命を生きる身、なのに、氷河はすぐに自分の(肉体上の見た目の)歳を超えて、刻々と死へと近づいていく。
氷河を愛するがゆえに、その変化を恐れるカミュ。
そんなある日、悲劇が起こる。(うっこっちもか!)
氷を割ってマーマの亡骸に会いに行った氷河(えええ)、潮流に流されて、その命が危うい状況に陥ります。
氷河との別れを恐れていたカミュ、思ったよりもずっと早く、その時が訪れてしまったことに大変動揺します。氷河の命を救いたい、その一心で、カミュは氷河のうなじに牙を立ててしまう。
初めて味わう氷河の血はそれはそれは甘いものでした。
何より、これで自分は孤独ではない、氷河を美しいまま手元に留め置けることに甘美な歓びを感じるカミュ。
それは長き孤独の生で、カミュが初めて感じた、「生きている」という感覚でした。
カミュから永遠の命を与えられて、死を免れた氷河、でも、氷河に待っていたのは、一変せねばならない生活でした。
日の光を浴びることのかなわない身体、常に血の餓えに支配される獣の本性との葛藤、14歳のまま時を止めた自分の姿、二度と触れられない母の形見のロザリオ……。
あれほど理解したいと願ったカミュをようやく理解し、なのに、その変化はあまりに残酷で、氷河はすぐにはその変化を受け入れられません。
自分を救うためにしたのだ、ということがわかっていても、カミュが伸ばす手を素直に取れず、ただ俯いてしまったり。
一方、カミュの方も葛藤します。
自分は、犯してはならぬ禁を犯したのではないか。
氷河から屈託のない笑顔を奪ったのは自分だ。窓辺に座って、寂しそうに外ばかり見ている氷河はもはや自分が愛した氷河とは言えない。
自分が愛していたのは、変化していく命の美しさ。限りある命を生きていたからこそ、カミュは狂おしく氷河に惹かれていたのだ。
氷河を救いたい一心だったが、自分が氷河に与えたのは、不変を生きる苦痛、それだけ。その苦痛をどれだけ自分が厭うていたか身に染みていたはずなのに、氷河を失いたくなかった己のエゴで、氷河を苦しめている。
そして、ある日。
眠っていたカミュは枕元に気配を感じて目を覚まします。
「氷河……」
近頃では互いに口をきくこともなくなり、目も合わさなくなってしまっていた氷河がカミュの枕元へ立っているのです。
氷河の頬は涙に濡れている。
どうした、と声をかけようとしてカミュは気づく。氷河の右手に──銃が握られている。
ゆっくりと身を起こすと、それを追うように氷河の震える右手が持ち上がって、その銃口がカミュの方を向く。視線を巡らせれば、氷河の左手の指先が痛々しく赤く焼けただれているのが見てとれる。
装填されているのは──銀の弾丸だ。
「殺したいほど憎んでいる、わけか」
ふふ、と笑うカミュは、でも、どこか幸せそうでもあり。
「お前のためになるなら喜んで殺されてやりたいが、それではお前は、」
そう言って言葉を切ったカミュは、ベッドサイドの抽斗を開ける。収められているのは氷河がもつものと同じ銃だ。弾丸はもうずいぶん前に装填してある。
ずっしりと重い銃把を握ってカミュはそれを氷河に向ける。
「もっと早くこうしてやるべきだった。お前が苦しんでいるのを知っていながら、少しでも長く共にいたいと願ったわたしを許せ」
互いに銃口を向けあう二人。
ほんのわずか、指先に力を込めれば、永遠の時からの解放は訪れるというのに、二人とも微動だにできない。
やがて、氷河が先に口を開く。
「……憎い、からではありません。俺を苦しみの縁に落としたあなたを、俺は、」
あいしているからです、と氷河はカミュを見上げる。俺の痛みは全部あなたの痛みだ、だから、あなたを解放してあげたいのです、と。
「そう心に決めてきたのに、あなたを失って一人永遠に生きるのかと思うと……」
俺にはやっぱりできない、と流れる涙をそのままに、氷河は銃口を下ろす。
同じように銃口を下ろして、氷河……とカミュはその背を抱く。できないのは自分も同じであるのだ。解放してやることが相手のためであると知りながら、その後に待つ孤独を思えばどうしても思いきれない。
「カミュ、俺と一緒に生きてください」
「そうだな、簡単に死んではならぬほどの罪をわたしは犯した」
いいえ!と初めて氷河が語気を強める。
「贖罪のために生きろと言っているのではありません。俺はただ、もう一度あなたと楽しく暮らしたい。それだけです」
「長い……永い時間になる」
「独りでは苦痛でしかありませんが、」
二人でなら、あるいは。
氷河の言葉にカミュの抱えていた苦しみはじわりと解けていく。
銀の弾丸の装丁された銃を互いに抱えたまま、二人は、永い永い旅に出るのでした。
完。
みたいな。殺し愛師弟対決的なのをやはり入れねばなるまいと!いつものカミュなら躊躇いなく氷河を殺しちゃいそうなんですが、そこはあれです、妄想でも氷河が死ぬとわたしがつらいので、珍しく氷河リードのカミュ氷で。
しかし!
氷を割ってマーマに会いに行くなら(聖闘士じゃなくても氷河とそれはワンセットだよ)やはりこのネタはザク氷で!
というわけでアイザック編は氷河吸血鬼バージョンです。
氷河が吸血鬼だと知らないのです、アイザック(=人間・氷河と最近知り合って仲良し)。
不死だと知らないから、いけない、氷河、あそこは潮流が……!と迷わず助けに飛び込んじゃう。
そして事故にあい、生死の境をさまようアイザック。
久しぶりにできた、同じ歳(にみえる)の友達を失いたくない、アイザックが死ねば彼の幼い弟妹達が路頭に迷ってしまう……(アイザックは両親はなくて幼い弟妹を働いて養ってる勤労少年という設定で)
葛藤して葛藤して、ごめん、とアイザックのうなじに牙をたてる氷河。
目が覚めて己の変化に驚くアイザック。
アイザック、まだ14歳なので、それを受け入れられない。
氷河をなじります。
何故俺を死なせておかなかった、自分の血を分けた弟妹の血を啜ってしまいたいと浅ましく湧き起こる欲望がどれほどの苦痛かお前にわかるのか、神の意志に反して永遠を生きるこの化け物め、悪魔だ、お前は、俺を結局弟妹から引き離した悪魔だ、となじる。
氷河は何も言わない。
ただ、ごめん、アイザック、とうなだれ続ける。
やがて、化け物めとなじることにも疲れて、アイザックは氷河とたもとを分かつ。
氷河と別れて、孤独の生を生きるアイザック、何年、何十年と過ごすうちに、次第に、氷河が抱えていた苦痛に気が付きはじめる。どれほど孤独で、どれほど傷つきながら生きていたのか、そして血への餓えがどれほど強いものだったのかも。
アイザックはその餓えに負けて、何度か人間を襲ってしまうのです。
その後で、俺は本当に化け物になってしまったと苦しむ。苦しんだ末に、氷河が一度も誰かを傷つけていないことに気づく。
氷河はその餓えに驚異的な意志の力で打ち克って、人間だったアイザックの傍にいたのに。
氷河に会わなくては、と、再び故郷の村へ戻るアイザック。
もうそこには誰もいないだろうと思っていても、彼の足跡を辿るために、アイザックは自分の生家へ行ってみる。
弟妹達は養っていた兄を失ってどうしたらだろうか、と、兄らしい顏を取り戻して気になり始めるアイザック。
己の異形への変化に混乱し、そんな運命に引き込んだ氷河をなじるばかりで、遁走後の弟妹達の行く末を考えてこなかった己を恥じつつ、近くの家に、ここへ住んでいた者がどうなったか知りませんかと尋ねてみる。
もう末の妹ですら生きてはいないほどの時間がたっています、だから、その問いは自己嫌悪を慰めるためだけの、ほとんど形ばかりのものでした。
が、出てきた娘は、家の奥に向かって呼びかけます。
「おばーちゃーん!死んだひいばあちゃんのこと知りたいってー!」
驚くアイザック。
末の妹は、「ひいばあちゃん」と言われるまでに長く生きたのか。
一体誰が養ったのか。
出てくる老婦人。瞳の色は末の妹にそっくりです。
そして彼は聞きました、弟妹達がどんな人生を送ったのかを。
彼らのそばに、いつも付き従って守っていた、金髪と青い瞳を持った美しい少年の存在を。
「不思議な人だったねえ……いつ会っても変わらない姿なの。夜にしか来なくてね。でも、来る時は、食べきれないほどの食べ物やおもちゃや色んな物を持ってきてくれて……優しかったというおじさん(=母の兄=アイザック)の話をたくさんしてくれてね」
氷河……お前は、俺の家族をずっと守ってくれていたのか。
衝撃を受けるアイザックの耳に、さらに届く言葉。
「あの人はいつも月のない夜にそっと来てくれてたねえ……そう、ちょうど今夜のような」
アイザックは弾かれたように顔をあげ、窓の外を見ます。
闇の中、浮かび上がるその影はまぎれもなく……。
100年の時を経て、再び邂逅する二つの魂──
おお、よかった何となくハッピーエンド?ぽくなった!すれ違いでいつまでも会えない悲恋でもいいんだけど。
氷河がお金を稼いだ手段は当然、「春をひさいだ」のですヨ!
そしたら桃色シーンも入れることができるもんね、ウシシ。
最後は一輝編。
うーん。
吸血鬼のお話、どこがドラマが広がるかって不死の設定、ですよね。
片方人間、片方吸血鬼、で、生きる刻の長さの違いがドラマを生み、二人の愛を盛り上げる……。
しかし、困ったことに一輝は不死鳥。
公式で既に不死ですよ。(いや、不死ってことはないかもしれないけどイメージで)
仮に一輝を人間としませんか。氷河吸血鬼で。
一輝の限りある命を憂う氷河……うーん、違和感ありあり。
じゃ、逆だ。吸血鬼一輝に、人間氷河。
あっさりカプっと襲って終わりなような?
葛藤、葛藤がないとドラマは生まれません。
というわけで、吸血鬼妄想一氷編はですね、ガラッと世界観を変えて、アンダーワールドとかナイトウォッチの世界です!
人間の世界に巧みに隠れて潜り込んでいる二大勢力、吸血鬼一族と、人狼一族、彼らは人間界(=餌場)の支配権をめぐって長らく対立しているのです。
氷河は吸血鬼一族。
しかし、人間を父に持つというダンピール(ハーフヴァンパイア)で、吸血鬼一族の中でも異端児なのです。
捕食の対象である人間が父親、ということで吸血鬼の中でも彼は常に嘲りの対象でした。
氷河の方も、人間をエサとしか思ってない彼らのことをこそ軽蔑していて。
(にもかかわらず自分も血の餓えを感じもするし、愛する母もまた吸血鬼、という葛藤)
だけど、幼い身では一族から離れては生きていくこともできない。
氷河が吸血鬼に感じる嫌悪は全て、同じ異形の者である人狼に向かい、氷河は対立する人狼一族をここぞとばかりに狩り続けるのです。
氷河はいつしか冷酷な殺し屋として人狼一族から畏れられる存在になってゆき、それと共に吸血鬼一族からは一目置かれた存在に。
一方の一輝。
彼の見た目は人狼で、人狼一族へ属してはいるのですが、彼もまた異端児でした。
吸血鬼も人狼も、人間を咬むことで仲間を増やしていくわけですが、一輝は人狼を母に持つ先天的な人狼でなく、かといって、咬まれたことで生まれた後天的な人狼でもありません。
彼は、吸血鬼と人狼の存在に気づいて、それを軍事利用できないかと長年研究を重ねていた城戸光政博士、彼の遺伝子操作によって人工的に生み出された人狼と吸血鬼の混血児だったのです。
見た目は人狼の血を色濃く引きながら、人狼の弱点である銀の弾丸でも死なず、かといって吸血鬼の弱点である日の光も彼を殺すことはないハイブリッド種。光政翁もとい光政博士のただひとつの完成品。
ただ、満月の夜には、本物の狼へと変化してしまい、変化してしまったら、完全なる獣として人格を失い、誰も制御できないという欠点があった。
その危険な本性ゆえに、一輝は誰とも交われない。
一輝は己を欠陥品として創生した城戸博士を憎みます。
獣の醜さを隠そうとしない人狼を、吸血鬼を憎みます。何より、制御できない獣を内に飼う、自分自身を嫌悪している。
そして、一輝は、ある日、城戸博士を殺してしまう。
憎しみの根源を断って楽になれるかと思ったのに、彼の心は空虚なまま。
空虚な心を抱えて、一人生きる一輝、同じ孤独を感じている氷河と出会います。
見た目は互いに敵対する人狼と吸血鬼なので、身の裡に熾きる本能のままに二人は交戦します。
が、これほど強い相手にあったのは互いに初めてです。
次第に、二人の交戦はお互いの血を求める高揚感に包まれて激しくなっていくのでした。
互いの血の色を見ながら、敵対しながらもどこか似た魂を感じる二人。
何度か交戦するうちに、次第に二人の距離は近づいてゆき……ほとんど交戦の延長のような殺伐とした流れながらも、身体を重ねるように。
互いの一族を裏切っての逢瀬、戦っているかのような血の匂いが色濃く漂う激しい情交に、どことなく二人は見えぬ絆を感じている。
何度目かの交戦代わりの情交の後で、氷河は一輝の首にかけられていた鎖に通された指輪を手に取る。
「らしくないな、お前がこんなもの」
「俺のものじゃない。俺が殺した男のものだ。あいつへの憎しみを忘れないために……殺した記念として持っているのさ」
ますます趣味悪いぞ、お前、と薄く笑った氷河、指輪の刻印に気づきます。
『愛を込めて。ナターシャ』
そう、実は城戸博士こそが氷河の父なのでした。
母から、父のことは『人狼と吸血鬼の醜い戦争を終わらせるために、両者を一つの種にできないか研究をしている偉大な学者』と聞かされていた氷河、衝撃を受けます。
父の虚像が崩れたことに、か、父が既に亡くなっていたことに、か、目の前にいる一輝がその父を殺したことに、か、何に一番ショックを受けているのかわからないまま、嘘だ、と叫んで氷河は思わず外へ飛び出します。
しかしここは人狼のテリトリー内、いかに氷河が強くても危険です。
駄目だ、氷河!と後を追う一輝。
が……外は折しも満月の月の光が降り注ぐ夜。
氷河を追って出た一輝は、たちまち心を失って狼の姿に。一輝は仲間である人狼たちをつぎつぎに血祭りにあげて、なお獲物を求めてギラギラとその瞳を輝かせている。
獣の咆哮でそれを知った氷河、一輝、だめだ、お前はこれ以上誰も殺すな、と一輝を探して戻ります。
人狼の根城に一輝を求めて飛び込む氷河。
おい、『氷河』が向こうから来たぞ、と血走る人狼たち。
氷河は人狼一族の間では、恐るべき処刑人でありながら、仲間を殺した憎き仇敵。
人狼たちは氷河を捕えます。(ここで桃色展開いれてもいいかもねー)
氷河はボロボロになりながらもどうにか人狼たちを振り切って一輝のところへ向かう。
対峙する二人。
氷河の倍ほどもある体躯の一輝狼が氷河を押さえつけます。
首元に咬みつかれる氷河。
でも反撃しません。
「一輝……もういいんだ、そんなに怖がらなくて」
獣と化した一輝の毛並みを優しく何度も撫でます。
「な?お前、本当は怖いだけなんだろ。指輪だって、もうこれ以上誰も殺したくないから戒めのために持っていたんじゃないのか」
獣の耳に氷河の言葉が届いたかどうかはわかりません。咬みつかれた氷河は血を吐きながら、それでも一輝狼を抱き締めるように撫で続けます。
「大丈夫……ほら……俺はお前を赦す……だから、そんなに怖がるな」
ぐるるると喉奥で威嚇していた一輝狼、おそるおそる、氷河の首を放します。
そして、一輝は初めて、満月であるにかかわらず自分の心を取戻し、狼から一輝の姿に戻ったのでした。
が、そこへやってくる人狼たちの残党。
コイツ!と氷河に向かって銀の弾丸の装填された銃を向ける。
咄嗟に氷河を庇って、弾丸を胸に受ける一輝。
一輝には効かないはずの弾丸ですが、なぜか、彼は血を吐き膝をつく……皮肉なことに、獣性を捨て、人間性を取り戻した一輝は不死ではなくなっていたのです…………
って、あああ!
いかん、これ以上書いたらどっちかが死んでしまう!!強制終了!!
あぶなかった……ドラマとしてはどっちかが死ぬ展開は盛り上がりますけど、せっかくの楽しい(???)妄想、死んではいやですもんね。
ラストは各自、お好きに妄想しといてください。
妄想はしつこく後編へ続く。