1000hitキリリク。お題は「カミュ・ミロ・氷河の三角関係でラストはミロ氷」でした。
性表現あります。18歳未満の方、閲覧をご遠慮ください。
◆まわり道 前編◆
氷河は天蠍宮の入り口で大きくため息をついた。
目的地は宝瓶宮なのだ。ここはただの通過点。通り抜けるだけだ。
通り抜けるだけが、なんて気が重いのだろう。気が重いのは通り抜けるだけですまないせいだ。
この十二宮制度がうらめしい。どうして、目的地にいたるまでいちいち途中の宮を全て通っていかないといけないのだろう。
氷河は現在、宝瓶宮でカミュの後継として修行を行っている。
シベリアでの修行同様、カミュは厳しく氷河を指導しているが、しかし、あの頃より幾分二人の距離は縮まっている。死をもって分かたれていた期間を経たことで、お互いを大切に想う気持ちを自覚させられ、こうして再会した後は、一緒に居られることを愛おしむように過ごすことが多い。
ただ、相手の愛情が、師弟愛か、家族愛みたいなものか、あるいはもっと他のものなのか、互いに確認しあったことはない。きっかけがないまま、微妙な均衡状態は保たれている。
氷河は宮を見上げてもう一度ため息をつく。
今日はカミュの用事で聖域の外に出て、たった今帰ってきたところだった。
行きは不在だったのか見つからずにすんだ。帰りもどうかいませんように、と祈りながら、覚悟を決めて天蠍宮内に足を踏み入れる。
黄金聖闘士相手では無駄と知りつつ、なるべく足音を立てないように気配を消して進む。宮内は静まり返ったままだ。
出口の光が見え、ああ、よかった、不在だったみたいだ、と肩で大きく息をしたところで、横から不意に突き出た腕に思いきり抱き込まれた。
「おい、素通りするつもりか」
「……っ……は、なせ!素通りも何もあなたに用はない!」
ミロの腕の中で、氷河が両手を振り回して暴れているが、ミロは片手でやすやすとそれを押さえこんでいる。
「言ってくれるじゃないか。カミュがいれば、俺は用なしか?俺だって、君をずいぶん世話してやっただろう」
「俺が頼んだわけじゃない」
そう言って、氷河は下から掬い上げるようにミロを睨み付ける。
ミロはそれを鼻で嗤った。
「ずいぶん強気だな。夜になると俺の胸でいつも泣いてたのはどこのどいつだ」
やっぱりその話になったか、と氷河は悔しそうに唇を噛む。一生の不覚とはこのことだ。
「あんなことになるってわかってたら、絶対にあなたなんか頼らなかった……!!」
「今さら嫌がっていました、では通用しないぞ。いつだって君は最後にはいつもかわいくすがりついてくるんだ」
「だからそれはあなたが無理やり…!」
氷河が真っ赤になって、ミロを殴ろうと両手を振り回す。それも難なく避けると、ミロは氷河を壁に押し付ける。氷河は唇を噛んで、じっとミロの目を見つめる。
「どうした。今度はダンマリか、坊や」
「……先生には絶対に言わないでくれ」
「なんだ。言っていないのか。君から言いにくいなら俺が言ってやってもいいが。お前がさっさと向こう側へ行ってしまうから、俺が氷河をもらってしまったってな」
「もらっ……俺はあなたのモノになったわけじゃない!それ以上言うなら本気で怒るからな!」
「怒るなら勝手に怒るがいい。俺自身は別に知られてやましいことなど何もない」
「……やめてくれ……本当に……カミュにだけは知られたくない。もう二度と失いたくないんだ」
氷河の瞳が泣き出しそうに揺らめいたことに気づき、ミロは少し力を緩める。
「バカだな、君は。カミュに知られたからって、失うと決まったわけでもあるまい」
ミロには、むしろその反対だという確信がある。この二人の気持ちが互いを向いていることは、衆目の一致するところであるのに、当の本人たちだけが相手の想いに気づいていないようで、見るからにじれったい関係を延々と続けている。
ほんの少し、誰かが均衡を破れば、あっという間に二人は想いを通じ合わせることができるだろう。
「さて、どうしてやろうか。ほかならぬ君の頼みだ。聞いてやらんこともないが」
急に態度を軟化させたミロを氷河は不審げに見上げる。しかし、チャンスを逃してなるものかと必死で訴える。
「お願いだから、先生には言うな」
「くくっ。『お願い』なのに命令か?……そうだな……それなら口止め料をもらっておこうか」
そう言って、ミロは氷河の返事を聞かず、顔を寄せてくる。慌てて氷河は強くミロの体を押し返す。
「……っ、黙っていてくれるなら何でも言うことを聞くが、そ、そういうのは、もうやめてくれ」
「何だ。また、坊やの駄々っ子か。いいぞ。好きなだけ我が儘を言うがいい。どれだけ言ったって君が最後にはどんな風に俺を強請るかはもう知っている」
「違うと言っている…!あなたが言ったんじゃないか!『カミュのことを考えなくてすむようにさせてやる』『代わりだと思えばいい』って!だったら、今はもう、あんな……あんなことまでする必要ないはずだ。あなたのことは尊敬している。感謝だってないわけじゃない。でも、だからって……」
「言いたいことはそれだけか?つまり、結局カミュがいれば、俺は不要だと言いたいわけだ。……それで?その『先生』はどんなふうに君に触れる?」
「先生はこんなことしない!先生を穢すようなことを言うな!あのひとは、あなたとは違」
ミロは氷河のセリフが終わらないうちにその唇を塞いだ。不意打ちで重ねられた唇に、身構える暇もなく、その熱い舌の侵入をやすやすと許してしまう。
「……っ……せん……せ……」
「おや、いいのか。あいつを呼んでしまって。可愛い弟子がどういうふうに乱れるかあいつが知ったらどうするだろうな」
「っ……あっ、……や、やめっ」
「何も宝瓶宮に永遠に帰るな、と言っているわけではない。たまには俺にもつきあえ。そのくらいの義理は果たせるだろう?」
「義理?義理でこんなことを……あっ、な、何を……!いやだ!おろせ!」
バタバタと手足を振り回して抵抗する氷河の身体をミロは問答無用で肩に抱き上げると、自宮の奥へと歩いて行く。
**
「……ミロ、重い」
自分の上に裸身を伏せたままのミロを、物を扱うような乱暴さで氷河は押しやった。ミロは大人しくごろりと反転し、肘をついて自分の頭を支えると、よろめきながらシャツをひっかけようとしている氷河を見る。
「そんな恰好で帰るつもりか」
そんな恰好?と問い返し、ミロが指差した先の姿見で氷河は自分の姿を確認する。
目尻には涙痕、乱れた髪、まだ上気の残る肌、服を纏えば見えぬ位置が大半とはいえ、そこかしこに咲いた所有印……。
まだ淫らな熱を帯びてこちらを見つめ返す青い瞳を見つけて氷河は愕然とする。
とてもではないが自分の姿だとは思えない。
自分はいつもこんな姿をミロに見せていたのかと思うと、今更ながらに、羞恥と自己嫌悪で気が変になりそうだ。
後ろからミロが近づいてきて、背中から包み込むように抱きしめ、氷河の耳を食みながら、鏡の中に語りかける。
「こんな姿、俺以外に見せるな。『先生』にも見せてはだめだ」
言われなくても、誰にも見られたくない。
ましてや、先生になんて見せられるはずはない。
自分自身ですらも正視が憚られるとばかりに、体を反転させて目を逸らそうとする氷河の髪を強く引いて、ミロはもう一度、姿見に向き直らせる。
「君が俺に抱かれている間、どんな顔をしているか、自分でよく見ているといい」
そう言いながら、ミロは氷河の腰から脇腹、胸へと撫で上げる。
まだ火照りの残る体は、軽く触れられただけで、あっけないほど簡単に高まる。ミロの掌の下で転がされた胸の突起は硬くしこりはじめ、下腹がじんわりと痺れるように疼く。
「氷河……目を開いてしっかりと見ろ」
ミロは氷河の顎に指をかけ、無理矢理に顔を上げさせる。氷河はいやだと首を振り、目をつぶり、唇を噛んで辱めに耐える。
「ほら、見たまえ。ここはもうこんなになっている」
柔らかな耳朶を口に含んだまま、ミロは低く囁く。
ミロの愛撫で昂ぶった雄をゆるく扱きあげられて、氷河の膝ががくがくと震えた。耳元で囁かれるミロの声だけでもう立っていられないほどの疼きを感じて、閉じた瞳から幾筋も涙がこぼれる。
「あ……ふぁ……ミロ……」
くずおれそうな氷河の細い腰を支え、ミロは氷河の腕をとり、姿見に手をつかせる。その冷たい感触に一瞬驚き、氷河は目を開き、間近で自分の顔を見る羽目になった。
「……っ……」
あわてて目をそらしたが、あさましく、媚びるような自分の瞳の色に羞恥を通り越して恐怖さえ覚える。
嘘だ。
いやだ。こんなのは、違う。
ミロは楽しそうに氷河をさらに嬲る。
「いい表情をするようになった。君は覚えがよくて教えがいがある」
そう言ってミロは、先ほどまでミロを受け入れていたところに、再び、昂ぶった己自身をゆっくりとあてがう。
「やっ……こんな恰好でっ……いや、ミロ……ミロ!やっ……あ、あ、ああーっ」
まだ、先ほど注ぎ込まれたもので濡れそぼっていたところを貫かれ、ぐちゅ、と濡れた音とともに、白濁した液が圧力で溢れ出し、氷河の太腿を伝い下りた。
「やああっ……ああっ……」
立ったまま、下から掬い上げるように突き上げられ、氷河は必死ですがるものを求めて手をのばす。触れるのはつるりとした鏡面ばかりで、すがるには頼りなく、ミロが動くにまかせて、氷河の体も激しく揺さぶられる。
腰をつかまれ、座り込むことも許されず、不安定な体勢が非日常的な感覚をもたらす。
自分が漏らす高い声と淫らに響く水音に、氷河の意識は、ぼうっと霞み、次第に次々に与えられる快楽のみを追いかけはじめる。
「ん…ん……はぁっ……ミロ、もう、俺……」
「ふ、素直だな。いつもそのくらい素直でいればかわいいものを。そら……お望みどおりにしてやろう」
言うや、ミロは氷河の腰を掴み、激しく抜き挿しを始める。
「あ……ん、ん、あああ───っ」
ミロがひときわ深く突き上げたのと同時に氷河も白い蜜を散らし、力の抜けた腰を揺さぶって、ミロも二度目の吐精を迎えた。
ぐったりとへたり込んで浅い呼吸を繰り返す体をミロは抱きかかえ、バスルームへと向かう。
放出の余韻の気怠さで、氷河は無抵抗でミロに全てを委ねている。
自分で気づいているのかいないのか。鈍い坊やだ。
**
日が暮れてきた。
机に向かい、書き物をしていたカミュは、そろそろ明かりが必要だな、と顔を上げ、同時に、そういえばまだ氷河が帰っていない、と気づく。
そんなに時間がかかる用事を頼んだつもりはないのだが、何か手間取ることがあったかとわずかに心配になる。
と、背後をそっと通る人の気配を感じた。
振り向く前に、反射で「ミロか」と呟くと、その気配がギクリと立ち止まった。
「……?氷河か。……おかえり。どうした?こんなに遅くまで」
「少し……道に迷いました。すみません、遅くなって」
「道に迷った?今更?お前はちょっと抜けているところがあるからな」
そうクスリと笑って、カミュは氷河の頭を撫でようと手を伸ばす。
が、氷河は一歩、二歩と後ずさり、「あの、今日は体調が悪くて……すみません、もう休みます、俺」と言い残すと、さっと身をひるがえし、宮の奥へと消えて行った。
カミュは戸惑う。
氷河はカミュに頭を撫でられるのが好きで、いつも、照れたように笑いながら、進んで頭を差し出してくるほどなのに、今のはどういうことだ。
そんなに体調が悪かったのだろうか、と心配し、そのうち、胸に違和感が広がり始める。
そういえば、今、わたしはなぜ振り向く前にミロが来た、と思ってしまったのか。
……?
中断していた作業に戻りながら、カミュは頭の片隅で、そのことについて思いを巡らす。
夜半過ぎ、ようやく作業を終え、ペンを置いた瞬間だ。その答えに行きついたのは。
匂い、だ。
ほのかに香ったのだ。ミロと同じものが。
どういうことだ。
石鹸だろうか。
確かにあれはミロのと同じ香りだ。
気のせいなどではない。
いや、ミロの、と断じるには早いかもしれない。が、少なくとも、普段使っているものではないことは確かだ。だからこそ彼が同じ空間に入ってきた瞬間に違和感を覚えたのだ。
氷河は一体どこで何をしていた……?
カミュはもやもやとした黒い思いを抱えながら眠りにつく。
**
その後も氷河の神経の磨り減る生活は続いた。ミロは用もないのに宝瓶宮に訪ねてきて、カミュの前でやたらと氷河に絡み、かと思うと、カミュの目を盗んで連れ出しては氷河を弄ぶ。
氷河はミロの真意がわからず翻弄されている。
カミュが不在だった間のミロはもっとずっとやさしく、真摯だったように思う。カミュの不在の寂しさを埋めるためだけに始まった関係であるはずなのに、どうしてこんなことになっているのか氷河にはさっぱりわからない。
「氷河、今日はここを会議に使うからそのつもりで」
朝起きて、カミュからその日の予定を告げられる。
「会議?」
「今度の任務の打ち合わせだ。シュラとミロが来る。そちらの部屋を使うから準備をしておくように」
「はい……」
あのひとが来るのか。途端に気が重くなる。
カミュの前だと、とりわけ意地悪く絡まれるのに決まっている。でも、さすがに今日は仕事だし、シュラもいる。大丈夫だ、だといいが。
二人が宝瓶宮に姿を現し、部屋に通した後も、氷河はなるべくミロとは目を合わせないように努力した。話しかけたり近寄ったりできないよう、相当に距離も取った。
そして、「お茶を入れてきます」といって、今、早々に部屋からは退去してきたところである。
これで、もう、あとは二人が帰るまで何ごともないはずだ、と息をつく。お茶さえ出した後は、別室で控えていればいい。氷河はまだ彼らの任務に口を挟めるような立場ではない。
キッチンでぼんやりとお湯が沸くのを待っていると、いきなり背後から口を塞がれた。驚いて声をあげようとする氷河の耳元に囁き声が降ってくる。
「氷河……あんな態度だと気づかれる。もっと自然にしていろ」
まるで、秘密の恋人同士だからとでも言わんばかりの言い方にカッと体が熱くなる。
違う。オレとあなたはそんな甘い関係ではない。
拒絶を伝えるために、振り向きざまに拳をぶつけようとするが、しなる氷河の拳はミロの顔面に当たる直前でしっかりキャッチされてしまう。
ニヤニヤと笑うミロの顔が近づいてきたかと思うと、あっという間に唇を塞がれた。
「……っやめろ!」
「暴れるのはいただけないな。聞こえてもいいのか」
「何を考えているんだ!すぐ隣に先生がいるのに!」
声を落として、でも気持ちの上では大声で氷河は怒鳴る。
「背徳的で燃えるだろう?」
「最低だな、あなたは。あなただってこんなことを知られたらまずいことになるに決まっている」
「?なぜだ」
本気で、どうしてかわからない、という顔をしてみせるミロに、氷河は呆れる。
「だって、あなたとカミュは親友じゃないか。カミュは俺の先生なんだし、こんなこと許されるはずがない」
「許す許さないっていうのは誰が決めることだ?」
「決まっている。カミュだ。カミュはきっと怒ると思う」
今度はミロが呆れる番だった。ミロは少しのけぞって、上から下まで氷河をまじまじと見、それから氷河の額を軽く小突いた。
「君は……自分が言っている意味をわかっているのか?少しは頭をつかってみるがいい。なぜそこでカミュが怒ると思うんだ?弟子の人間関係にいちいち口を出すようなのは単なる『師』を逸脱していると思わないのか」
まあ、あいつなら口出ししかねんが、とチラリと思ったが、それは黙っておく。氷河はミロが言った意味を一生懸命考えているようだ。
「カミュが君を好きだということを君は既に知っている、そうじゃないのか」
「まさか!カミュがそんなふうに俺を好きだなんてありえない。先生はそんな人じゃない」
「『先生はそんな人じゃない』か。君のその盲信がカミュを縛っているんだがな……ああ、意味がわからないならそれでいい。とにかく、だ。君がカミュに知られたくない、と思うのは自由だが、俺は別に困らないってことだ。さあ、大声出して助けを呼ぶか、いい子にするか好きな方を選ぶんだな。どちらを選んでもお前は自由だ」
と、さらにミロは氷河との距離を詰め、腰を抱き、シャツのボタンに手をかけてくる。
首筋に舌を這わされ、鎖骨をゆっくりとなぞられると、抗議の声をあげるつもりで開いた口から、甘く掠れた声が漏れた。慌てて、手の甲を唇に押し付け、ミロから顔を背ける。
ミロは満足げに笑って、今度は目の前にある、柔らかな耳朶を口に含み、ゆるく扱きあげた。氷河は、堪えきれずに、小さく声をあげ、後ろによろめくと、シンクの縁に手をついた。
と、その時、突然にキッチンのドアが開けられた。
「氷河、お茶はまだ……ミロ、なんだ、急に消えたと思ったらこんなところで」
氷河は文字通り飛び上がった。
ミロの広い背に隠れて、カミュから直接は見えなかったに違いないが、シャツのボタンは上から三つ目まですでに開いている。必死にボタンを留める手がおかしいほど震えた。
ミロはそんな氷河を愉しそうに見下ろして、余裕たっぷりに振り向いた。
「坊やがまともにお茶が入れられるとはどうも思えなくてね。親切にもこのミロが手伝ってやってるところだ」
「お茶くらい氷河は一人でいれられる。早く戻れ。話にならんではないか」
カミュがそう言うと、ミロは、はいはい、と含み笑いをしながら去って行った。
カミュはその笑いに、自分への挑戦を敏感に感じる。去って行く背を射すくめるように睨み、氷河へと視線を戻した。
残された氷河は、俯き、自分のつま先を見ている。こころなしか頬が赤い。
「どうした、氷河。あいつに何か嫌なことでも言われたか?」
「いえ、あの……俺が不器用だからからかわれていただけです。いつものように」
そう言って、カミュを見ないようにして、薬缶の火をとめ、ティーポットに湯を注ぐ。カミュはじっとそれを見つめる。氷河の指先が細かく震えている。
三人分のお茶を淹れ、トレイにのせた氷河が顔を上げた瞬間、カミュは気づく。
氷河のシャツのボタンが掛け違えられていることに。
朝はきちんとしていた。そういうことに気づかぬカミュではない。
氷河の顔をよく見ようとしたが、ぎこちなく視線をそらされた。
カミュは黙ってトレイを受け取り、氷河に背を向けた。