寒いところで待ちぼうけ

ネタ


お話と言えるほど体裁は整っていないネタ集のようなもの
(基本的には雑記です)

◆腐的アンジェリクダイジェスト◆

 アンジェリク(ゴロン夫妻作・木原敏江漫画)を読んだところ、氷河総受的に変換余裕だったために脳内キャスティング上映してみました。

 ちなみに本来の作品内容。

 17世紀、後の「太陽王」若きルイ14世統治下のフランス。
 片田舎の貧乏貴族の娘アンジェリクが数奇な運命に翻弄されながらも逞しく生きていく姿を描いた歴史大河ロマン小説。

 実在の人物(ルイ14世)周辺を巡る謀略とか、宮廷の慣習を巡るアレコレとかを交えつつ、華やかな宮廷に憧れてはいるものの、当時の貴婦人方とは少々毛色が違って、常識にとらわれず奔放で行動的、お転婆で自分の意見をズバズバ言うアンジェリクが、屋敷の下男ニコラ(幼馴染)、従兄弟である侯爵家のフィリップ(初恋の人)、伯爵家のジョフレ(婚約者)などなどと繰り広げる恋模様も同時に描かれた作品。



 ……というお話を氷河周辺で変換するとどうなるか、というネタ妄想。キャスティングだけこちらでして、彼らに台本渡してまんま演じてもらったと思っていただければ。

 ラストの重大なシーンに至るまで盛大にネタバレしております&お遊びだと思って性別については深くつっこまない方向でお願いします!姫がどうとか子がどうとか書いてるけど氷河は男です(笑)キャスティングの都合上、氷河受以外のカプも気軽に登場しているので地雷の多い方にはお勧めできない内容です。(具体的にはカノミロ、サガカミュっぽいものがそこはかとなく混じります)


 フランスの片田舎、モントローの領主、サンセ男爵の姫に生まれた氷河。
 氷河は下男で幼馴染のアイザックと一緒に森へ遊びにでかけてきています。
 そこで二人は盗賊の一味に襲われますが、旅の吟遊詩人に命を助けられます。
 城へ無事に戻った氷河とアイザックでしたが、そこへ訪ねてくるならず者・ジュリアン。
 アイザックの父が酒場で賭けをし、負けてしまったので、その代金代わりにアイザックを連れていくという。
 アイザックと離れたくない氷河は、賭け代を代わりに払ってくれるように父に掛け合うも、元が貧乏貴族なサンセ家にはそんなお金は払えません。
 にもかかわらず、ジュリアンへ向かって「明日まで待て」と啖呵を切る氷河。
 城を抜け出し、向かった先はお金持ちの親戚プレシ侯爵家。
 跡取り息子のカミュは氷河の初恋の人で、お転婆な氷河ですが、宮廷一と噂される美貌の従兄の前でだけは緊張のあまりいつも口をきくこともできないほど憧れているのです。
 が、今日だけはアイザックのために、と勇気を振り絞って金策を頼んでみるつもりです。
 しかし残念ながらカミュは不在。代わりに対応したカミュの母に冷たくあしらわれ、用件さえ言い出せない氷河。
 とぼとぼと城を後にする氷河ですが、ひょんなことから、カミュの母が国王ルイ14世暗殺の謀略にかかわっている証拠を手に入れてしまいます。
 証拠の小箱を木の洞へ隠し、自分の城へ戻る氷河。
 しかし、戻ってみれば、城は昼間の盗賊一味が舞い戻ってきて焼き討ちにあっている最中でした。
 盗賊たちの略奪行為に全てを失って失意の男爵家。
 父が氷河に言います。
 実は以前からお前に結婚の申し込みが来ている。
 相手はトゥルーズの伯爵で大金持ち。男爵家を救うために嫁にいってくれないか、と。
 そんな理由で結婚したくはない、と唇を噛む氷河の目の前で、約束の時間がきたぞ、とジュリアンに連れてゆかれるアイザック。
 自分の無力さに打ちひしがれる氷河。
 いつかアイザックを取り戻すことを心に秘めて、しぶしぶ結婚を承諾します。
 ところが、美しく結婚衣装で着飾った氷河を迎えに来たのはあの吟遊詩人でした。
 彼こそがペイラック伯爵家の長男、ミロだったのです。
 吟遊詩人のふりをして求婚相手の品定めに来ていたというミロにすっかりつむじを曲げた氷河。
「俺は好きでお前と結婚するんじゃない。結婚したって俺の心はお前になんかやらない」
 世の淑女であれば絶対に言わないセリフです。
 そして少し考えれば男爵家の運命を握るミロに後先考えずそう言ってのける氷河がおかしく、でも、そういう奔放さを好ましいと思ったミロは悠然と微笑みます。
「でも、君はきっと俺を愛するようになる」
「……なっ!?」
「いいよ、坊やが心から俺を愛するようになるまで結婚式は延期してやろう」
 そうして、氷河はミロの元で、奇妙な関係のまま共に暮らすことになったのでした。

 ミロと暮らすうち、氷河は次第にミロの人柄に惹かれてゆきます。
 力づくで氷河を無理矢理に自分のものにしたりせず、指一本触れようとしないミロ。
 特権意識の強い貴族社会の中にあって、ミロは不思議なほど誰に対しても分け隔てなく、身分というものを意識しない自由な魂を持っていました。
 やがて氷河はミロを愛するようになり、二人はようやく正式に婚約。
 ミロを心を許せる相手だと思った氷河は、ずっと気にかかっていたことをようやく相談します。あの夜、知ってしまった国王暗殺の計画を。
 が、しかし、その会話は、城の新しい使用人(国王暗殺一派)に聞かれていたのです。

 折も折、国王ルイ14世の結婚式に招かれる二人。
 しかし、華やかで聡明なミロ伯爵と、その若く美しい婚約者氷河は、あまりにも目立ちすぎました。
 主役の国王の影さえ霞むほどに。
 嫉妬する国王。
 いずれミロは余の反乱分子となるやもしれぬ、と疑心暗鬼に囚われた国王の命により、ミロは無実の罪によりバスチーユへ投獄されてしまいます。
 しかも、国王暗殺一派がこれ幸いと、真実を知ってしまったミロの口封じに、とミロを国王暗殺計画の首謀者として仕立てあげてしまいます。
 ミロはほどなくして火刑に処されることに決まってしまう。
 そんな、と半狂乱になる氷河。
 戻ったら結婚するはずなのに。
 ミロの子を産んで、あの美しいトゥルーズの館で幸せに暮らすはずなのに。

 国王の決定は絶対です。
 でも、諦めきれない氷河は、危険を恐れずに横暴で有名な国王の元へと行きます。
 真実を必死に訴える氷河。
 ミロは反逆者なんかじゃないんです。本当の反逆者は、あなたの腹心の中にいるんです。俺はその証拠の小箱を持っています。
 だったら、その証拠とやらを持ってこい、と一度だけ氷河にチャンスをくれる国王。
 サンセへ戻り、その小箱を持って王宮へと急ぐ氷河。
 しかし、道中、国王暗殺一派が氷河を襲います。
 が、斬りつけられて絶体絶命の氷河の命を救うのは見覚えのある逞しい背中。
「お前は……アイザック……!」

 アイザックはスラム街へと氷河をかくまいます。
 アイザックはジュリアンに連れ去られた後、彼らの一味となって、生きるために多少汚いことに手を染めながらも優しい心は失わないまま逞しい青年へと成長していたのでした。
 アイザックとの再会を喜びながらも、愛するミロを助けるのに氷河は必死です。
 怪我の手当てだけした氷河は、どうにか奪われるのを免れた小箱を持って、王宮へと駆けつけます。
 国王の前へずらりと居並ぶ貴族たち。
 中には暗殺一派の姿もあります。
 進み出る氷河。
「この中に国王暗殺に加担した貴族たちの念書が入っています」
 ざわめく一同。
 国王、青ざめた顔で小箱を開きます。
 が、そこに入っていたのは……白紙。
「余を馬鹿にしたな、サンセの小娘!大勢の前で恥をかかせたな!」
「そんな!確かにサンセを出るまではここに、この中に!嘘です、何かの間違いです、信じてください、国王!俺は絶対に嘘なんてついていません!」
「ええい、きかぬ。伯爵ミロは予定通り、火刑に処す!」
 泣き叫ぶ氷河は、取り押さえられ、抵抗虚しくサンセへと送り返されてしまいます。
 それでも氷河は諦めません。
 もう何もできることはないかもしれない。だけど、最後の瞬間まで、ほんの少しでもミロの近くにいたい。せめてひと目でもあの人の姿を見れたら。
 パリをめざし、必死で進む氷河。
 旅費が無くなり、美しかった自慢の金髪もバッサリと切って売ってしまいます。

 火刑の日。
 氷河は処刑場の広場へといました。
 処刑台から氷河の姿に気づくミロ。
 薄汚れた格好で、髪も短く、涙を浮かべて、こちらを見上げる氷河の姿に愛しさがこみ上げます。
 ミロは氷河に届くようにと、声を限りに愛の歌を歌います。
「愛する乙女よ、わたしが死んでも勇敢な騎士と恋をしろ」と。

 そして氷河の目の前で、目隠しをされたミロは、真っ赤な炎に包まれて行ったのでした。

 放心状態の氷河の前に再び現れたアイザック。
 気を失い倒れた氷河を、ジュリアンたちと暮らす根城へ連れて帰り、献身的に看病をします。

 彼らはならず者の集団ではありましたが、それも貧しさからきたこと。
 全ては特権階級の貴族から虐げられているせいです。
 貴族の暮らしとは違い、貧しいながらもささやかな幸せに包まれて、少しずつ癒されていく氷河。

 そして、アイザックはある日、氷河にプロポーズをします。
 悩む氷河。
 俺はまだミロを愛している。
 しかし、ミロの最後の言葉が甦ります。自分が死んでも他の男と幸せになれ、と。
 死者を想って泣いて暮らすな、という愛する人の遺言に、氷河は涙を拭いて立ち上がります。
「アイザック……1年……いや、3年待ってくれ。そうしたら……俺は……」


 それから3年。
 パリでは「闇の天使」と名乗る盗賊集団が闊歩していました。
 その正体は氷河とアイザック、そしてジュリアンの配下の者たちです。
 氷河は、火刑によって死んだために没収され、貴族たちにばらまかれたミロの財産を取り戻すべく、夜な夜な盗賊として貴族たちの屋敷に侵入しミロとの思い出の品々を探しているのでした。
 そんな盗賊集団の討伐の命を受けたのは国王のお気に入りの元帥、宮廷一の美貌で軍神としても腕利きのカミュ侯爵。
 盗賊一味の容貌を聞き込み、行方の知れない従妹を思い出すカミュ。
 有能な彼は、役人たちが手を焼いていた盗賊一味をあっさり捕えますが、その中に、予想通り従妹の姿を発見し、冷たく言い捨てます。
「堕ちたものだな、従妹どの」
「ミロの形見だ、取り返して何が悪い」
「三年も前のことだ」
「あなたにとってはそうだろうな」
 初恋の人が軽蔑したように見せる冷たい瞳に震える氷河。直視できないほどの美貌の人の前に、堕ちた姿をさらすのはさすがに恥ずかしく、涙がでます。

 従妹というよしみでか、氷河のことは逃がしてくれたカミュですが、代わりにアイザックは囚われの身に。
 アイザックを取り返すために手を尽くす氷河。

 その中で、氷河はカミュの侯爵家が金に困っていることを知ります。
 カミュの父が莫大な借金を作り、そのため、カミュは意に染まぬ結婚を受け入れようとしているのです。
 かつての自分の姿とかぶる氷河。
 だめだ、結婚は愛する者どうしがするものだ、と氷河は諦めきっているカミュに代わって金策に走る。カミュと付き合いのある貴公子、貴婦人に、助けを求める手紙を書いてお金を集める氷河。
 宮廷で付き合いのある人々が、急にカミュに色目を使い始めたことで氷河のしたことを知るカミュ。
「お前はわたしを男娼として扱ったのだぞ!」
「そんなつもりでは……友達なら困った時に助けてくれるものだと……」
「下心なしで助けてくれる人間などどこにいる!金の代わりにわたしに夜ごと貴族どもの相手をせよというのか!」
「ごめんなさい……でも……愛のない結婚なんてしてほしくなくて……」
 もういい、金はわたしが返してくるからお前はアイザックを連れて出て行け、と氷河を叩き出すカミュ。
 貴族は政略結婚が普通です。
 氷河が言う愛のない結婚しか知らないカミュは何故氷河がそんなことをしたのか理解できません。
 結局、カミュは貴族たちにお金を返し、愛のない結婚は取りやめにしたものの、傾きかけた侯爵家を立て直すために、金持ちのサガ公爵の愛人になることを選択したのでした。

 カミュの計らいで罪人として捕らわれることを免れた氷河とアイザックですが、アイザックはこれをきっかけに氷河のために堅気になることを決意します。
 足抜けするために、ジュリアンたちから制裁のリンチをうけるアイザック。
 そんなアイザックの姿に、氷河もついに決心します。
「アイザック、俺を待っていてくれてありがとう。俺……これからはお前のために生きるよ」
 謀略で命さえ取られてしまう、愛のない結婚生活しかない貴族の暮らしなんかもうごめんだ、俺はこれからアイザックと生きていくんだ、と前へ進む氷河。
 ささやかな結婚式をあげて、パリの街角で小さな料亭を開く二人。

 しかし、幸せな二人にカミュ侯爵が言うのです。
「アイザック、お前はミロに似ている。なるほど、だから氷河はお前といるのだな」
 氷河の方は、カミュがそんなことを言うまでアイザックがミロと似ているなどと思ったこともありませんでした。だが、言われてみれば確かにアイザックはミロに面影が似ているような気がしてくるのです。

 深夜、夫となったアイザックの寝顔をぼんやり見つめて、ミロを思い出してしまう氷河。
 こんなに幸せにしてくれるアイザックといるのに、死んだミロのことが忘れられないなんてきっと俺は地獄に落ちる、と悩みながらも必死にアイザックに応える氷河。

 しかし幸せになろうと足掻く若い夫婦を運命は放っておいてはくれません。

 ミロに面影が似ているというアイザック。
 それもそのはず、アイザックは実はミロの腹違いの弟だったのです。
 若きジュリアンの恋人テティスがミロの父に仕えていた折りにお手付きになってしまい生まれたのがアイザック。
 しかし、ミロの母がそれを知り、跡目争いが起きてはいけないとアイザックは伯爵家から遠ざけられていたのでした。
 ジュリアンはアイザック出生の秘密を知っていて、恋人を奪った伯爵家へ復讐するためにアイザックを奪い、3年前、氷河が伯爵ミロを救うために持ち出した国王暗殺計画の証拠の入った小箱の中身を白紙へとすり替えておいたのでした。

 役人の手入れによってならず者集団のジュリアン一派が掃討された日、世話になったジュリアンをどうしても放っておけなくて助けに飛び込んだアイザックに、瀕死のジュリアンはそれらのことを告白してから息絶えます。

 ジュリアンを助けるために大けがを負ったアイザックを背負って氷河が助けを求めに行った先はカミュのところでした。
 カミュは冷たく追い返します。
「国王の元帥たるわたしが卑しい盗賊を助けると思うか?」
「そうしなければならないはずです。なぜなら、俺は、あなたの母が国王暗殺計画に加担していた証拠となる手紙を持っています」

 仕方なく氷河とアイザックを助けるカミュ。
 あの時に白紙にすり替えられた本物の手紙が戻ってきたことで、火刑に処されたミロの名誉を回復させるために国王に今一度訴えたい氷河。
 国王の寵愛めでたい側近カミュの力を借りてベルサイユ宮殿へ上がることにします。
 アイザックは怪我が元で半身不随の身となっています。
 そんなアイザックに寄り添うのは、宮殿に上がることになって、町の料亭のおかみから美しい貴婦人へと変身をとげた氷河、
「心配するな。伯爵家のトゥルーズの館を取り戻したいだけだ。緑豊かなあの館でアイザック、お前と静かに暮らしたいんだ。お前はミロの弟だとわかったのだから、あそこで暮らす正当な権利がある」と言います。
 しかし、アイザックには、もはやその言葉は「本当はミロとその館で暮らしたかったんだ」としか聞こえないのでした。

 持ち前の愛嬌と美貌と才知でもって、陰謀渦巻く宮廷でも氷河は少しずつのしあがっていきます。
 ついに国王からアイザックを正当な伯爵の系統だと認めさせることに成功する氷河。
 アイザックは本当はそんなものはどうでもいいのです。ただ、氷河にそばにいてほしい。美しく着飾った氷河ではなく、料亭のおかみだった素朴な氷河のままでいて欲しい。
 でも、氷河はアイザックの気持ちに気づきません。ミロのトゥルーズの館を返してもらうまでは、と宮廷に上がりつづけます。

 ある日、狩りに出る国王ご一行にお供する氷河。
 国王に甘やかされているばかりか、宮廷一の貴公子カミュに世話を焼かせている氷河に嫉妬した婦人方からの嫌がらせによって氷河は狼に襲われます。
 が、そこへ颯爽と現れて氷河を救うカミュ。
 氷河の命を救ったものの、カミュは冷たく「そんな汚らしい格好で陛下の前へ出るんじゃない」と氷河を追い返します。
 相変わらず辛辣なカミュ。俺はきっとカミュに心底憎まれているのだと氷河は凹みます。

 しかし、後になってカミュの愛人、サガ公爵が氷河に言うのです。
「君の悲鳴を聞いた時のカミュの取り乱しよう、あんな姿は初めて見た」と。
 サガ公爵は氷河にカミュの生い立ちを語って聞かせます。
 美貌に生まれついたがゆえに、幼いころから貴族たちの間で愛玩動物のように扱われてきたカミュは、本当の愛と言うものを知らないのです。色事を通じてしか愛を学んでこなかったカミュは、誰かに優しくしたいときにはどういう態度を取ればいいかわからないから君に冷たくするのだ、と。
 あの冷たい双眸の下には処女雪のようにまっさらな本当のカミュが隠されているのだと聞かされて、氷河は少しカミュへ感じていた気持ちを改めます。

 しかし、運命はますます彼らを放っておきません。

 ある日、死んだはずだったミロが姿を現すのです。

 処刑の日、かねてよりミロのことを密かに愛していたスペインの姫君カノンが直前に替え玉とミロをすり替え、洋上へとミロを逃れさせていたのでした。
 薬によって意識が朦朧としているミロに無理矢理署名をさせて、結婚までしてしまうカノン。
 目が覚めた時に命があることを喜ぶも、知らぬ間に人の夫となってしまったことを嘆くミロ。
 しかし、受けた恩義に応えるため、そしていつの日か氷河に再会する日を夢見て、カノンと共に海賊として生きのびてきたのでした。

 アイザックという弟がいたことを知り、たった一人の兄弟に会うために密かに会いに来たミロ。
 しかし、氷河のミロへの未練を知るアイザックは、お前なんか兄じゃない、と反発します。
 ミロは氷河がアイザックと結婚していると知り、弟よ、お前のことが大切だから氷河の前へは俺は決して姿を現さない、と誓います。

 物陰からひっそりと幸せそうな二人を見つめるミロ。
 これでいい。
 弟と、最愛の氷河が共に幸せなら、と去ってゆく。

 が、半身不随となったアイザックを常日頃世話しているイオは嫉妬の炎にかられます。
 今まではアイザックと氷河の絆に諦めてきた。
 でも、ミロが現れた今、氷河さえいなくなれば、アイザックは自分のものになるのでは……?

 一方のカノンも、氷河のことを未だにただ一人の運命の相手と言いきり、自分に全く触れようとしない夫に焦れています。

 そこで二人は手を組み、一計を案じるのです。

 氷河をカノンとミロが暮らす屋敷に呼び出し、わざと二人の仲睦まじい様子を見せつけます。
 カノンは赤ん坊(実は使用人の子)を抱いてミロに近寄り、「ミロ、ほらお前に鼻筋が似ている」などと言って見せます。
 元来子どもが好きなミロ、「おや、そうか?ほら、俺がパパだぞ、ふふ」などと冗談で返す。

 木陰からその光景を見せつけられた氷河。
 ミロが生きていたということで歓喜の絶頂に一度は昇り、しかしもう妻子がいたということで絶望の淵へ落とされます。
 生きていたのに連絡をくれなかったのは心変わりしてしまったせいなのか、と。それも子どもまでいて。
 火刑の日から6年たっています。
 自分だってアイザックと結婚してしまった身、身を引き裂かれる思いでミロには声を掛けずに、失意のままアイザックの元へ帰ります。

 しかし、そこにはイオにまさに誘惑され中のアイザックの姿が。
「まて、誤解だ氷河!」
 アイザックの制止を振り切って飛び出す氷河。

 行くあてなく彷徨い、最後にはカミュの元へ辿り着き、その胸で泣き叫ぶ氷河。
 アイザックの愛を失いそうだということよりも、やはり、ミロが生きていたこと、なのに、もう人のものだということが氷河を慟哭させるのでした。

 夢うつつでミロを呼び、何度も、愛している、ミロ、まだ俺はあなたを愛しているんだと繰り返します。
 死んだと思って諦めたのに、生きているのなら例え人のものでも諦められようか、と必死でミロの手を探す。

 朝になって、目を覚ます氷河。
 自分がカミュの裸の胸へ抱かれていることを知り、激しく混乱します。
 ミロと結ばれた夢を見たのだと思っていたが、では、あれは……!
 カミュの方は「泣いているご婦人を慰めるにはこれしかなかろう」と何故氷河がそんなにショックを受けているのかわからず戸惑います。
 当時の貴族社会においては氷河のような『結婚した相手とのみ愛し合いたい』という考え方はなく、皆、夫や妻以外にも恋人を多数持つのが普通だからです。

 氷河のこととなると、いつもの怜悧な表情が消え、取り乱した姿を見せるカミュの変化にいち早く気づいたサガ公爵はカミュに言います。
「お前は氷河を愛しているのだ」
 これが愛しているということなのか?と初めて自分の気持ちを知るカミュ。

 一方、アイザックの元へ一度は戻った氷河ですが、アイザックを献身的に介護するイオの姿を見て、改めて決意します。
 アイザックのことをこんなに必要としている人がいて、そして、自分は身も心もアイザックを裏切った……。
 もう一緒にはいられない、とアイザックの元を密かに去ります。

 パリを離れる前に最後にひとめ、のつもりでミロの隠れ住む屋敷の庭でそっと佇む氷河。
 そこでミロとついに再会するのです。
 抑えきれない思いのままに固く抱擁を交わす二人。
 いけない、あなたには妻子がある、と身を引こうとする氷河に、妻とは形式上の結婚で、子はいない、俺の子を産むのは君だけだというミロ。
 形式上とはいえ妻ある身で、大事な弟の妻への想いを断ちきれないミロと、アイザックと結婚していながら常にミロの面影を探してしまっていた氷河、地獄に落ちるなら共に二人で、と、もう決して離れ離れにならないことを誓うのです。
 ようやく結ばれた二人、これで幸せになれるかに見えましたがそうではありませんでした。

 夫を奪われたカノンが氷河をさらって殺そうとするのです。
 もみ合いになり、はずみでカノンを逆に死なせてしまう氷河。
 カノンは海賊に身をやつしていても元はスペインの姫君です。
 フランスで王室の覚えめでたい伯爵夫人に殺されたとあっては緊張状態にある両国の戦争勃発は免れません。
 そこでミロは氷河の罪をかぶります。
 海賊としてのミロが妻であるカノンを夫婦げんかの果てに殺してしまったことにして、ミロは国外へ逃亡します。
 2年後にきっと迎えにくると約束を残して……


 再び一人になった氷河。

 しかし、国王がそんな氷河をカミュと結婚させてしまいます。
 形式上はまだアイザックの妻である氷河ですが、国王が勝手にその結婚を無効にしてしまったのです。
 2年後に迎えにくるというミロの言葉を信じて、大人しく国王に従う氷河ですが、カミュとは夫婦となって以降も、あの一夜の過ち以来、清い関係のまま。
 それでも、カミュのわかりにくい優しさや冷たい態度に隠された純粋な気持ちに気づきはじめ、氷河は次第にカミュと打ち解け、ミロに対するものとは違う穏やかな愛情を育んでゆきます。
 しかしまたしても国王の謀略が。
 妻を献上せよ、と国王はカミュに言うのです。
 国王がカミュと氷河を結婚させた目的はそもそもここにあったのです。
 カミュの忠誠心を試すこと。
 美しい氷河を一旦は与えておいて、それを奪う。
 フランスに全てを捧げているというカミュの言葉を試すためだけに国王は二人を結婚させたのでした。

 わたしの言葉に偽りはなし、と国王の要求を進んで飲むカミュ。
 カミュに呼び出されて待ち合わせの場所にやってきた氷河は、そこにいたのが国王と知り驚きます。
 お前の夫も納得したことだ、余の寵姫に、と押し倒されて、氷河は、いやだ、と激しく抵抗し、つい、国王に怪我を負わせてしまうのです。
 必死に謝る氷河ですが、国王は余にこれ以上恥をかかせるな、と氷河を退けます。
 が、氷河が立ち去った場所に一通の手紙が落ちていることに気づき、国王はそれを拾い上げる。

 今ごろ氷河は……と酒に逃げているカミュの元へ青ざめた氷河が戻ってきます。
「ごめんなさい、カミュ……」
「言わなくていい。こうなることは知っていた」
「違う……俺、抵抗して……何もなかった……」
「なに?」
 常日頃、結婚とは愛する者同士がするもの、と言う氷河のことですが、まさか絶対者である国王相手にまでそうだとは思わず、そこまで夫たる自分に操を捧げていたのか……という喜びがカミュの中に湧き上がる。
「だが、よく黙って帰していただけたな」
「いや、俺はきっと死刑になる。抵抗する時、国王を……刺してしまった」
 蒼白になって国王の元へ馳せ参じ、氷河のしたことの許しを乞おうとするカミュ。
 しかしそこで国王は己が拾った手紙をカミュに見せるのです。
 そこにはミロから、ようやく君を迎えに行くことができる日が来た、と迎えにくる日時が愛の言葉と共につづられていたのです。
「どうりであの気の強い姫君がお前と結婚する時に抵抗しなかったはずだ。カミュ……お前は利用されていたのだ」
「その……ようです」
 氷河が国王相手に抵抗したのは、わたしに操を捧げていたからではない、ミロに対してだ、と知るカミュ。
 国王はカミュに命じます。
 絶対にミロを余の前に引きずって参れ、と。

 氷河の待つ屋敷へと戻るカミュ。
「お前は手紙を拾われたのだぞ、国王に。わたしは……ミロの討伐を命じられた。命じられたからにはどんな手をつかっても職務を全うせねばならない」
 淡々と氷河にそう告げます。
『どんな手をつかっても』
 カミュはミロをおびき寄せるために、氷河ばかりかアイザックまでも人質として使います。

 自分のせいで、ミロが危機に陥り、静かに暮らしていたはずのアイザックまでもこんな謀略に巻き込まれてしまった、とショックをうける氷河。
 ミロに連絡する手段はなく、今はただ、姿を現してはだめだ、と祈るのみ。


 約束の日。
 宮廷で、国王以下、人質となった氷河とアイザックと一緒に一同はミロの到着を待ちます。

 絶体絶命の状況の中、華やかに着飾ったミロは颯爽と登場し、堂々と国王の前へ進み出ます。
「さあ、愛する女と弟を救いたければ余の前へ跪くのだ」
「さて……2対2、交換条件としては悪くないようだが」
「?どういう意味だ」
「国王陛下、王弟殿下と皇太后殿はどちらにいらっしゃるのかな?」
 ハッとする国王。そう言えば二人の姿が先ほどから見えません。
 ニヤリと笑うミロ。
「人質交換と参りましょう。なに、バスチーユでの拷問のことは水に流してさしあげましょう。その二人に傷をつけないでいてくれれば、こちらも無傷で二人を返しましょう」
「……こ、国王を相手に脅迫か……!」
「それが何か?」
 飄々と自分のペースで交渉を進めるミロに、人質を交換し、ミロ達が国外逃亡するまで手を出さないと約束させられる国王。

 しかしプライドを傷つけられて黙っているはずがありません。
 ミロを騙して、人質を交換した後に、人質の氷河アイザック含めて皆殺しにしてしまえ、とカミュに命じます。

 屋敷に戻り、想いをはせるカミュ。

 氷河は死ぬのか。
 わたしの手で。

 愛することを知らなかったカミュに、人を愛する真摯さを教えてくれた氷河を殺すのはつらいが、主の命令には逆らうという選択肢はない。カミュはそんな風にしか育てられていないのですから。

 さらば、わが愛、わが命……。

 そっと心の中で氷河に別れを告げるカミュ。


 人質交換は、郊外で行われることになりました。
 遠くまで見渡せる平地ならば、互いに兵を潜ませることができません。

 氷河とアイザックを連れたカミュが、王弟と皇太后を連れたミロと対峙します。
 最後にカミュに泣き顔を見せる氷河。
「ありがとう、カミュ。あなたは俺の初恋でした。ずっとずっと憧れていた。御守りにあなたの髪をひと房もらってもかまいませんか?どうかお幸せに……」
 カミュの美しい赤毛を胸に抱いて、涙で別れを告げた氷河はミロの元へ。
 ミロとすれ違う瞬間、カミュは独り言のように漏らすのです。
「この先の橋は傷んでいてね……山沿いを行った方がいいかもしれないな。……あとは引き受ける」
 ハッとするミロ。
 その橋は傷むほど古いものではありません。
 つまり王がその橋をミロもろとも爆破するつもりだということをカミュはそっと教えてくれたのです。

 カミュは振り向かないまま、取り戻した皇太后と王弟を国王の元へと連れ帰ります。
 国王は、爆破の瞬間を見届けないと気が済まん、とその場へ残ります。
 サガ公爵は、妻の爆死をカミュに指揮させる国王にほとほと嫌気がさしています。カミュの精神は大丈夫だろうか、とそっと様子を窺い見ましたが、怜悧な顏は表情がないまま。
 そのうち、カミュが「すみません、わたしはちょっと様子を見てまいります」と姿を消す。

 爆破の瞬間を今か今かと望遠鏡でのぞく国王ご一行。
 そこへ橋へと続く一本道に馬車が現れました。よし、ミロが罠にかかった、と興奮するご一行。
 しかし、サガだけが気づきます。馬車の手綱を握るのは、美しい赤毛の……

「やめろ、今すぐ爆破をやめろーっ!あれは、あそこにいるのは……!」

 サガの絶叫虚しく、皆が見守る中でカミュが乗った馬車は粉々に。
 山道へ逃れていた氷河の目にもその光景は移ります。

「カミュ!!嘘だ、嘘だーっ!」
 泣き叫んで粉々になった馬車の元へ駆け戻ろうとする氷河をミロが止めます。
「よせ、今戻ればカミュの気持ちが無駄になる!」
 ミロの腕の中で泣き崩れる氷河。


 一方、サガ以下、国王たちもようやくカミュの元へ辿り着きます。
 酷いけがを負って虫の息のカミュを抱きかかえるサガ。
「わたしは小さい頃からずっと宮廷の人形だった。本当のわたしは氷河の行動の一つ一つに一喜一憂するちっぽけな人間だったにすぎないのに」
「そうとも君は人間だった。自分の意志で君はちゃんと恋をしたんだ」
「あまりうまくいったとは言えないな……」
「いいや、氷河は君の本心を知ってかなり動揺していた。君の美貌に見つめられて心が動かない女がどこにいる。今度こそ君たちは心から愛し合えるようになる」
「心……から……?」
「そうとも。邪魔な恋敵のミロはわたしがきっと始末してやる」
「……ふふ……それは無理……だな……」
 サガの唇に自分の唇を押し当てるカミュ。
「……お前の方からキスしてくれたのは初めてだな……さあ、カミュ……カミュ?カミュ!!!」

 カミュはサガの腕の中で息絶えたのでした。

 青ざめる国王に向かってサガは言います。
「あなたが追い詰めたのです、国王。生まれながらの貴族のカミュにはあなたに逆らう術などなかった。あなたがカミュを殺したのです!」
 国王に向かって何ということを、とサガを取り巻く王の部下たち。
「下がれ!カミュは誰にも触れさせん。わたしが……パリまで連れて帰る」
 サガはカミュの亡骸をパリまで連れて帰った後にバスチーユへと投獄されたのでした。


 カミュの命を賭けた助けによって無事に国外へ抜けようとするミロ達ですが、最後の瞬間、アイザックは船に乗るのを拒みます。
「俺は一緒に行けない。氷河を頼みます……兄さん」
 初めて和解する兄弟。

 カミュを失ってこのうえアイザックとまで別れることを哀しむ氷河ですが、ミロと幸せになることを誓って二人は別れます。

 残ったアイザック、カミュの崇高な最後に勇気をもらって単身宮殿に乗り込み、国王に対峙します。
「何故、兄とともに行かなかった。むざむざ罪を背負いにきたのか、愚か者め」
「俺はフランスが好きだからです。それにカミュ……俺はあの人の気持ちがわかります。同じ、氷河を好きだったものとして。だから……彼の話し相手くらいにはなりたいと思って」
「死んだ人間のか?」
「ええ。ですが俺だっていつかは死にます。王様、あなただって」
 アイザックの不遜な発言に青ざめる部下たち。
 しかし、国王は部下たちを退けます。
「死者と話せるなどと思う無学な者はあの伯爵の弟ではない。もうよい。弟はやはり兄と共に国外へ出たのであろう。だが、同じ名のよしみだ、サンセの近くにある、伯爵の領地はその名と共にお前が正式に継ぐがよい」

 カミュの壮絶な最期は暴虐な国王の心にも小さな変化を与えていたのでした。

 そうしてアイザックはサンセの領地へ戻り、イオと家庭を築いていきます。
 ある日届く氷河からの便り。

 子どもが生まれたんだ。カミュと名付けた……。


(終幕)


 以上、変換妄想、でした。キャスティング、いかがでしょう?

 お話はもうおもいっきり四角関係なんだけど、でも3人の間で揺れる氷河が憎めない!ミロに気持ちは定まっていながら、状況が状況なだけにそこ仕方なかったよねーという。
 でも錯乱状態でも上にのっかってんのがカミュかミロかくらいの区別はついてほしいけど(笑)

 ほかにも突っ込みどころは満載なんですけどね。
 手紙を落としちゃだめー。
 ついうっかりが多すぎー。
 浮気は正直に言わずに黙っといてあげてー。
 啖呵きっといて結局カミュ頼りかー。
 でも、氷河ならどれもこれもやっちゃいそうなんだこれがまた。

 それに、一応これはハッピーエンドで終わってるけど、冷静な目で見れば、ミロ氷、これうまくいくのか?とか思ったりして。
 結婚目前という一番盛り上がった状態で引き離されて、延々、離れたまま8年。ドラマチックにようやく結ばれて、共に暮らし始める。

 ……。

 アレ、この人ってこんな人だっけ、って思う瞬間が来ると思うのですよねー。(身もふたもない)しかし幸せになってくれなきゃカミュが浮かばれないのでそこは考えない方向で!

 ちなみに小説版の方は、だいぶ展開が違っていて、正体を隠した海賊ミロと氷河が共に暮らしたりする展開もあるらしく。(気づかない氷河もおかしいやろ、それ!)
 さらに、その「アレ、この人ってこんな人だっけ」という部分も含めた泥沼恋愛劇場がさらにここから数巻続くようです。う、うわあ(汗)

 でも元作品ほんとにおもしろかった。
 わたしは最初はミロ氷応援で読んでましたが、最後は不器用なカミュの魅力の虜になっちゃってて、カミュがんばれって思いながら読んでたので涙でラストが見えなかった。

 氷河を愛してるけど、生い立ちゆえに国王に逆らえないカミュ、というのはまんま十二宮編にあてはめてもいける。愛弟子が守る女性が真の女神だと知っていて、弟子を救いたいカミュ。でも、宝瓶宮を守護せよという教皇の命令にも逆らえない。
 そこで弟子のためにカミュがとった行動は……(涙)

 全然互いにかすりもしない世界観なのに、どことなく聖闘士と親和性の高かった変換妄想なのでした。

(fin)
(2012.11.29UP)